シリコンのひずみ・応力評価

圧力や応力の加わった物質には結晶構造のひずみ(歪み)が生じます。物質の結晶構造・分子振動に起因するラマン散乱光は、そのひずみにより周波数の変化が起こります。これは、レーザー光と同じ周波数を持った光が散乱する弾性衝突散乱であるレーリー散乱に対して、非弾性衝突散乱であるラマン散乱の特徴です。ラマン分光法は、物質のひずみ・応力を解析するために活用され、イメージングにより応力・歪みマッピングが可能となっています。



■ラマン分光が歪み・応力測定に威力
ひずみ(歪み)が存在する結晶は、無ひずみの結晶に比べてラマン散乱光が周波数シフトします。下の図のように、圧縮応力のかかったシリコンのラマン散乱光(ここではωs1)はひずみの無いシリコンのラマン散乱(ここではωs2)に比べて高周波数側にシフトします。シリコンは520cm-1に光学モード(F2gモード)があります。このピークは結晶ひずみに対して敏感であり、引張応力に起因するひずみは低波数側に、圧縮応力に起因するひずみは高波数側にシフトすることが知られています。


圧縮応力によりラマン散乱光は高波数へシフトする
▲圧縮応力によりラマン散乱光は高波数へシフトする



■ピークのシフト量から応力を計算
この520cm-1のピーク波数シフト量は応力に対して比例して増加します。このため、正確な波数シフト量を測定することで、ひずみ量も正確に測定することができます。正確な波数シフト量を測定するには、高い波数分解能を持つ測定器、およびピーク重なりを取る手法が用いられます。高い波数分解能は分光器のグレーティングの分散を大きくすることで可能になります。また、スペクトル解析からピーク位置を決定し、無ひずみ状態のスペクトルのピーク位置からのシフト量を算出することで照射位置のひずみ状態を決定することが可能です。


圧縮応力・引張応力による520cm-1のピークシフト
▲圧縮応力・引張応力による520cm-1のピークシフト



■シリコン(Si)の応力分布観察
シリコン結晶の欠陥やひずみをラマンイメージングで検出することができます。右の図は、シリコン(Si)ウエハー上のキズを測定した画像です。シリコンの520cm-1に現れるラマンピークは、応力により結晶格子がひずむことでそのピーク位置がシフトします。そのピーク位置のシフトをイメージングすることで応力分布を観察できます。黄色の部分は、低波数側へのシフト、濃青色の部分は高波数へのシフトをあらわしています。キズ周辺部分で、結晶格子が圧縮応力・引張応力を受けひずんでいる様子が観察されています。RAMANtouchは0.1cm-1のピークシフトを検出しイメージングすることが可能です。RAMANtouchはひずみシリコン(歪みシリコン、歪みSi)、シリコン薄膜のラマンイメージングに利用することができます。高速の画像取得で、短時間で測定を行うことが可能です。


測定時間: 10分、応力 = -250 MPa × Δν(cm-1)