薄膜シリコン中の粒界のラマン観察

0.1cm-1を超える高精度ピークシフト解析

上の二つの画像は、シリコン結晶薄膜中の粒界の分布を、光学顕微鏡とラマンピークシフト解析とで観察した画像です。光学顕微鏡では薄膜全体が均一に結晶化されているように見えますが、シリコンのラマンピーク位置のシフト量を画像化するピークシフト解析を使うことで、多結晶シリコンの痕跡である結晶粒界を観察することができます。

■測定に用いたサンプルについて
薄膜トランジスタに利用される厚さ50nmのアモルファスシリコン薄膜を、Pulsed RTA法によりアニールし、生成したものです。アニールにより、薄膜中の多結晶を核として結晶が成長し、薄膜全体が結晶化されています。

※このサンプルは奈良先端科学技術大学院大学の浦岡行治教授よりご提供頂きました。

アモルファスシリコンと結晶シリコンの分布観察(アニール前)

下のふたつの画像は、アニール前の試料観察結果です。アニール前の薄膜では、光学顕微鏡でもラマン画像でも、結晶シリコンとアモルファスシリコンの分布を観察することができます。ラマン画像では、結晶シリコン由来の520cm-1のラマンピークに緑を、アモルファスシリコン由来の470cm-1のブロードなピークに赤を割り当てて、分布をイメージングしています。

(参考)ピークシフトイメージングについて

微小な結晶の歪みや結晶性の高さは、その物質がもつラマンピーク位置のシフト量で検出することができます。得られたラマンスペクトルを複数のガウス関数、またはローレンツ関数の和でフィッティングし、フィッティングのパラメーターを画像化します。RAMANtouch/RAMANforceでは、0.1cm-1を超える高い精度でピークシフト量を検出することができます。