顕微鏡の歴史

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紀元前から存在したレンズと光学

 虫眼鏡も顕微鏡の一種ととらえると、その歴史は大変古く、紀元前から存在し、イランの遺跡から水晶を研磨したレンズが発見されています。しかしこの時代の用途は、集光で太陽熱を集めるためだったようで、傷口を焼いてふさぐために医者が使用していたようです。
 拡大鏡としての利用が始まったのは、11世紀以降でした。アラビア(エジプト)の科学者アルハーゼンがその著書「光学」の中で、ものの見える原理や眼の構造について発表し、その中で視力を補うレンズについて記述がありました。その本がラテン語に翻訳され、多くの修道士に読まれるようになり、ヨーロッパ各地で修道士によるレンズの製作が盛んになりました。13世紀には、書物の上に直接置いてルーペ(リーディングストーン)として使用されていました。
 レンズが発展するのは、イタリアのベネチアで、それまでの色ガラスとは違う無色透明のガラスが盛んに作られる様になってからとされ、13世紀にはすでに眼鏡があったという記述も発見されています。

 

顕微鏡の発明は16世紀末のオランダ

 顕微鏡の発明は、1590年頃、オランダのヤンセン親子が2つの凸レンズを組み合わせて、発明したとされています。望遠鏡を逆から覗いて、偶然発見したとされていますが、望遠鏡の発明はそれより20年ほど後とされています。ヤンセン親子が逆から覗いたのは、像が倒立して写る、現在、一般的に天体望遠鏡として使われているケプラー式望遠鏡です。天体を初めて望遠鏡で観察したガリレオが作ったのは、17世紀に発明された、像が倒立しない本来の望遠鏡(ガリレオ式望遠鏡)です。
 バネのフックの法則で有名なロバート・フックは17世紀に顕微鏡を使って、微生物のなどを顕微鏡で観察したスケッチを発表しています。そのときの顕微鏡の倍率は最高でも150倍ほどだったといわれています。一方、フックがイギリスの王立協会に紹介したオランダのレーウェンフックは、自ら磨いたレンズ一枚の顕微鏡で200倍以上の倍率を実現しています。この、レーウェンフックの顕微鏡はプレパラート(試料を固定する観察用のガラス板)にレンズがついたようなものでした。このころ、レンズや素材のガラスについてはまだよく研究されておらず、一枚だけでも歪んで見えるレンズを二枚合わせると、像がよく見えなくなってしまいました。

 

現代の顕微鏡の確立と飛躍

 レンズを複数くみあわせた現在のような顕微鏡が、発展するのは19世紀になってからでした。ドイツのカール・ツァイスは、物理学者のアッベやガラス職人のショットと協力し、6?700倍の倍率を実現し、医学や生物学に大きく貢献しました。19世紀末には、光学顕微鏡のほぼ限界まで性能が向上し、飛躍的な発展を遂げました。
 その後、照明、偏光などの照明の工夫や、蛍光など試料加工の技術が発展しましたが、それまでの光学の延長上にありました。1950年代後半に研究され始めた共焦点顕微鏡は、解像度をあげる(より鮮明に見る)点と立体構造を知ることができる点で、それまでの顕微鏡とはちがっていました。

 

光学顕微鏡の限界を超える

 一方、光学顕微鏡の解像度、分解能(拡大しても像がはっきり見える性能)は、光を使う以上、原理上の限界がありました。野口英世は黄熱病の原因を細菌と考えていましたが、実際にはウィルスで、光学顕微鏡では理論上発見することはできませんでした。そこで、登場するのが光を電子に置き換えた(透過型)電子顕微鏡、TEM です。電子は光より1000倍以上理論的な分解能が高く、百万分の1ミリ(1ナノメートル)の観察もできることなります。透過型電子顕微鏡は、1930年代にドイツで開発され、戦前の1938年には、すでにシーメンスから発売されていました。
 同じ電子顕微鏡でも、走査型電子顕微鏡は、原理が違います。こちらは、レンズで画像を拡大するというより、電子線という、先端が非常に細い針(プローブ)で、試料表面をなぞり(走査)、その情報を画像にする走査型プローブ顕微鏡の原型ともいえます。試作は同じ頃に行われたにもかかわらず、その発展は、1960年代になってからでした。
 最初の走査型プローブ顕微鏡(SPM)は、1983年にIBM・チューリッヒ研究所で世界で初めて原子像の観察に成功した走査型トンネル顕微鏡(STM)でした。原子の上をなぞった(走査した)のは、まさに針でした。
 その後、SPMは、原子間力を利用するものも開発されています。また、走査型電子顕微鏡も電子で試料表面をなぞったときに得られる情報(特性エックス線、反射電子)を分析することにより、構成元素などを分析することもできるようになっています。走査から画像化にいたる処理は、コンピュータ、電子機器の飛躍的性能の向上がその発展の一端を担っています。
 光学顕微鏡でも走査型ものが開発されています。先にあげた、共焦点蛍光顕微鏡やラマン顕微鏡も光を使った、広い意味で走査型プローブ顕微鏡ともいえるでしょう。また、近年、近接場光という特殊な光をみる顕微鏡も研究されています。