ラマン散乱について

物質にある波長の光を当てると、同じ波長の光が散乱します。(レイリー散乱)しかし、一部の散乱光は、その物質を構成する分子の振動に応じて、波長が変化します。これらがラマン効果です。波長の変化した散乱、ラマン散乱のうち、振動数が小さいくなる、波長の長くなるものを、ストークス散乱といい、逆に振動数の大きくなる、波長の短くなるものを、アンチストークス散乱といいます。通常、強度の強いストークス散乱を用いて、分光分析が行われます。

ラマン散乱

 

分子はオモリ(原子)がバネ(結合)でつながったような構造をしていて、それぞれの結合が常に振動しています。分子からのラマン散乱光を分光器にかけると、結合によって決まった色の光が含まれることがわかります。

分子の振動を示すラマン散乱

 

分子のラマンスペクトルには複数のピークが含まれます。多数の結合を持つ分子からのラマン散乱光を分光器に通して検出すると、多数の、色の違うピークが得られます。ラマン散乱光の強度を色の違いを横軸にしてグラフにしたものがラマンスペクトルです。

分子のラマンスペクトルには複数のピーク

 

ラマンスペクトルは物質に固有です。ラマン分光の特徴は物質によって異なるラマンスペクトルを検出することです。構成する分子の結合が異なることで、ラマン散乱のスペクトルは物質によって大きくことなります。下の図はリボースとグルコースのスペクトルで、異なる位置にピークを持つことがわかります。これらのピークの位置は物質に固有なのです。

ラマンスペクトルは物質に固有

 

たとえば純粋な炭素でも、結晶性によってスペクトルは大きく異なります。黒鉛や備長炭、ダイヤモンドはどれも炭素(C)原子でできた物質ですが、それぞれ結晶性が異なります。結晶性が異なるとは、結合の状態が異なり、結晶構造が異なることです。結晶の構造の違いがスペクトルの違いとなって現れるため、結晶性の違いをラマンスペクトルから知ることができます。

ラマンスペクトルは結晶性によって大きく異なる

 

分子振動によって、ラマン散乱光の波長がかわるので、同じ炭素の結晶でもグラファイトとダイアモンドでは区別をすることができます。カーボンナノチューブの研究などに威力を発揮しています。さらに同じ物質でも応力などラマン散乱が変化することから、半導体などの微細欠陥解析にも利用されています。この分野では、空間分解能が1μm程度であることも優位に働いています。ラマン散乱は入射光の波長をずらした分、ピーク波長もずれますが強度は変わりません。蛍光は入射光の波長によって、蛍光の強度は大きく変わります。蛍光を起こさない入射光を選ぶことによって、蛍光サンプルでも効率よくラマン分光を行うことができます。
ガラスなどの透明物質を通して対象物を測定することもできます。途中の物質のスペクトルをキャンセルすることもできるし、ピンホールをおいて共焦点顕微鏡とすることで、深さ方向の分解能を持たせることもできます。水溶液の分析も行うことができます。溶け込んでいる物質のラマン散乱の強度が十分あるからです。