ラマン分光分析テクニック

測定テクニック編

第5回 CCD検出器を設定する

掲載日 2013年11月12日

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今回のCCD検出器の設定が完了すれば、一通りの測定準備作業は終了です。CCD検出器では信号と共に必ず雑音が発生します。 CCD検出器を理解し、正しく設定することでS/N比の高いスペクトルを得ることができます。

 

CCD検出器の雑音の由来

CCD検出器に生じる雑音は主に読出し雑音、ダークショット雑音、ショット雑音に分けられます。

読出し雑音……電気回路での信号の増幅や読出しの際に生じる雑音です。読出しの周波数を切り替えることで雑音を低減できます。

ショット雑音……光信号によって生じるショット雑音です。ショット雑音とは、入射するフォトンの統計的な変化によって発生する雑音です。 ショット雑音は信号の平方根によって増加するため、十分な信号強度があれば影響が小さくなります。

ダークショット雑音……暗電流に伴うショット雑音です。暗電流とは、光入力のない状態における信号のことです。CCDの温度や露光時間によって変化します。

雑音の種類
 

CCDの設定によるS/N比の変化

読出し雑音の変化

読出し周波数を切り替えた場合のスペクトルを示します。 読出し周波数が低ければ読出し雑音が小さくなり、微弱な信号が検出できていることがわかります。 しかし、読出しに要する時間が長くなってしまうため、S/N比が十分であれば高速読出しを使ったほうが短時間での測定ができます。

読出し周波数による読出し雑音の変化

暗電流とダークショット雑音の変化

暗電流が生じる原因はCCDの熱です。そのため、暗電流を抑えるためにCCDは冷やした状態になっています。 しかし、電源投入直後などCCDが既定の温度まで冷えていない状態では暗電流が大きくなります。 冷却温度による暗電流の変化を下図に示します。 温度上昇により暗電流が増加し、それに伴いダークショット雑音が増加していることが分かります。 また、暗電流は露光時間に比例して大きくなるので、CCDが同じ温度でも露光時間によってその大きさが変化します。

基本的に暗電流およびダークショット雑音を小さくすることはできませんが、普段よりもベースラインが大きい場合は一度CCDの温度を確認してください。

CCD冷却温度によるダークショット雑音の変化
ビニングによるS/Nの向上

ビニングとは隣り合ったピクセルの信号を加算することです。 CCDによりビニングをすることで信号強度が増え、また、読出し回数が減るため読出しに伴う雑音が減少します。 以下に、ビニングによるスペクトルの変化を示します。 ビニングをすることで信号強度が増加していることが分かります。 しかし、隣り合った点のデータを加算するため空間分解能はビニング数に反比例して減少します。 そのため、空間分解能をあまり必要としない状況で、S/N比を高く測定したい場合や測定データサイズを小さくしたい場合に用いられます。

ビニングによるスペクトル強度の変化

エタロニングによる信号強度の変化

雑音とは異なりますが、可視用のCCDでは近赤外領域にCCD基板の干渉によるスペクトル強度の振動が現れます。 これを、エタロニングといいます。 以下のグラフは励起波長に785nmのレーザーを使った場合のスペクトルです。 波長880nm以上においてエタロニングが生じています。 微弱な信号だとエタロニングの影響により、信号が埋もれてしまうことがあります。 このエタロニングの大きさは、CCD検出器の種類によって異なります。 そのため、近赤外領域の測定を多く行う場合には、エタロニングが軽減されたCCDを選定されることをお勧めします。

エタロニング