ラマン分光分析テクニック

測定テクニック編

第7回 ラマンイメージを取得する

掲載日 2014年1月14日

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ラマンイメージとは

ラマンイメージング測定したデータを操作している様子を動画にまとめました。 測定した試料は、リチウムイオン電池の負極です。

 

操作の手順の説明を以下に示します。 まずは、測定範囲を指定し網羅的にラマン測定を行います(下図1)。 全領域の平均ラマンスペクトルには、特徴的なピークが3つ観察されました(下図2)。 その中で、各ピークを赤、緑、青で選択します(下図3)。 ピーク強度を色の濃淡で画像化すると、それぞれピークに由来する材料の分布を得ることができます(下図4左)。 このように各ピークの強度分布をカラー表示したものをラマンイメージといいます。 各色を個別に選択すると、赤はナノシリコン、緑はケッチェンブラック、青は黒鉛であることが分かります(下図4右)。 イメージング測定をすることで、材料の分布(材料の大きさ、面積など)、結晶性や応力の分布を画像として観察することができます。

 
▼1. 測定領域を指定して網羅的にラマン測定
ラマンイメージング測定領域
 
▼2. まずは測定範囲全体の平均スペクトルをチェック
測定領域の平均ラマンスペクトル
▼3. 気になるピークに色を割り当てると...
測定領域の平均ラマンスペクトル
 
ラマンイメージングと選択領域のラマンスペクトル ▲4. 各ピークの強度分布をカラーで観察できます。さらに、微小領域のラマンスペクトルから、各成分を特定できます。
 

ラマンイメージで必要なピーク強度の目安

次に、ラマンイメージング測定する際にどれくらいのピーク強度が必要になるのかを、市販のグラフェン試料を使って説明します。 以下に露光時間を0.3秒、1秒、3秒、10秒として測定したときの平均ラマンスペクトルを示します。 ここでは、2Dバンドと呼ばれる2685cm-1付近のピーク強度は、露光時間が長くなるにつれて、40counts, 130counts, 420counts, 1300countsと増加しています。

 
▼測定領域の平均ラマンスペクトル
グラフェンのラマンスペクトル
 

2Dバンドのピーク強度によりラマンイメージを作成すると、各露光時間に対して以下のラマンイメージが得られました。 0.3秒では平均ピーク強度は40couts程度と小さいため、おおまかに試料の分布は分かりますが、バックグラウンドとの区別が難しくなります。 1秒では、平均ピーク強度は130counts程度になりますが、まだ少し雑音が混ざったようなラマンイメージになります。 3秒では、平均ピーク強度は420counts程度になり、滑らかなラマンイメージになっています。 10秒では、平均ピーク強度は1300counts程度になりますが、得られるラマンイメージは3秒の場合とほとんど変わりません。 よって、ラマンイメージを作成するためには、目安として500counts程度のピーク強度があればよく、それ以上ではあまり変わらないということが分かります。

 
▼露光時間0.3秒(測定時間1分)
露光時間0.3秒でのラマンイメージ
 
▼露光時間1秒(測定時間2分10秒)
露光時間1秒でのラマンイメージ
 
▼露光時間3秒(測定時間5分30秒)
露光時間3秒でのラマンイメージ
 
▼露光時間10秒(測定時間17分)
露光時間10秒でのラマンイメージ
(共通の測定条件:対物レンズ:50x/ NA0.8、パワー: 1.3mW/pixel、スペクトル数:40,000 )
 

ここでは2Dバンドに着目して説明しましたが、2Dバンドよりも強度の小さいDバンドやGバンドでも評価したい場合には、評価したいピークの内、強度が最も小さいピークを基準にして露光時間を決めます。 例えば、今回の試料ではDバンド、Gバンド、2Dバンドの3つのピークによりラマンイメージを作成する場合には、最も弱いDバンドを基準にして露光時間を決めます。 ただし、最も弱いピークと他のピーク強度比が100:1程度の材料を測定する際には、小さいほうのピーク合わせて露光時間を長くすると、他の強度の大きなピークが飽和してしまうことがあります。 このような場合には、最も強いピークが飽和しない程度に露光時間を長くして、弱いピークについては平均回数を多くすることでSN比を稼ぎます。