二次電池の種類と特徴

物質の化学反応により電気を作る電池(化学電池)には、使い切りタイプの一次電池、充電と放電を繰り返すことができる二次電池(蓄電池、充電池)と燃料電池があります。使いきっても充電すればふたたび使用可能な二次電池は、モバイル機器をはじめ非常用の蓄電池など多くの場面で活用されています。以下に、代表的な二次電池の種類と特徴についてまとめました。

名称 特徴及び主な用途
鉛蓄電池 鉛蓄電池の古くからある身近な例としては、自動車のバッテリーに使われる鉛蓄電池が挙げられます。鉛蓄電池はボルタ(Alessandro Giuseppe Volta、1745-1827、伊)が化学電池を発表してから60年後の1859年に、プランテ(Gaston Planté、1834-1889、仏)により発明されました。鉛蓄電池は製品としての改良は加えられているものの、現在に至るまで利用されています。例えば、全てのガソリン車に搭載され、エンジンを起動する際などに使われています。また、一部の電気自動車の電力供給にも使われています。
ニッケル・カドミウム蓄電池 鉛蓄電池の次に登場する二次電池は、1899年にユングナー(Waldemar Jungner、1869-1924、スウェーデン)が発明したニッケルカドミウム蓄電池です。実際に商品化されて広く普及したのは1960年代に入ってからになりますが、大電流の充放電が可能なため、電話や電気工具などのコードレス化において威力を発揮し、その一部は現在でも利用されています。有害金属であるカドミウムが負極に使用されている点が課題でしたが、1990年に松下電器工業と三洋電機により、負極に水素吸蔵合金を用いたニッケル水素二次電池が商品化され、ニッケルカドミウム電池の置き換えが進みました。
金属リチウム電池 ニッケルカドミウム蓄電池が普及し始めた同じ頃、金属リチウム電池に関する特許がRobert A. Rightmire達によって取得されました。容量が非常に大きく有害金属であるカドミウムを使わないことから、当初、ニッケルカドミウム蓄電池に変わるものとして期待されました。しかし、この電池は負極にリチウム合金を用いるのですが、充放電反応の過程で負極表面に金属リチウムが樹状に析出して、短絡・発火の原因になる、という大きな問題が持ち上がりました。金属リチウム二次電池の理論容量は大きく非常に魅力的でしたが、金属析出の対策が困難なために普及には至りませんでした。そこで、同時期に研究されていた、負極に炭素を用いるリチウムイオン二次電池が脚光を浴びることになります。リチウムイオン二次電池の商品化はニッケル水素二次電池の翌年にソニーと旭化成によるもので、この両者の登場により、電気自動車とハイブリッドカーの開発が急速に進みました。
リチウムイオン二次電池 リチウムイオン二次電池は、負極にグラファイトなどの炭素材を用いてリチウムイオンを吸蔵し、また正極にはリチウムと遷移金属の酸化物を用いることで、充放電に伴う金属析出を抑制することができました。理論容量はリチウム負極の10分の1程度に減ってしまいますが、繰り返しの耐久性と安全性が向上したことは商品化において重要なポイントです。リチウムイオン二次電池は、ニッケル・カドミウム/ニッケル・水素電池よりも電圧及びエネルギー密度が高いので、身近な例では携帯電話の小型軽量化に大きく寄与しました。また、それらの二次電池で課題だった自己放電(電池物質と電解液の反応による放電)はとても少なく、メモリー効果(浅い充放電の繰り返しによる容量減少)がない点も実用上優れた点として上げられます。難点は、電解液に可燃性溶剤を用いている点であり、万が一の場合に備えた安全対策が重要になります。商品化されてからの歴史が浅い新しい種類の電池であるため、現在もより良い材料を目指した研究開発が進められています。
リチウムイオンポリマー二次電池 リチウムイオンポリマー二次電池は、リチウムイオン二次電池と化学反応系は一緒ですが、電解質に高分子ゲルを用いることで安全面に配慮したものです。液漏れの心配がないため、リチウムイオン二次電池では一般的な頑丈な金属製の外装が不要になり、アルミラミネートパウチなどが使われます。そのため、外装分の体積が不要、または同じ体積により多くの電池を積むことが可能となります。液漏れの心配はありませんが、電解液を高分子ゲルに浸み込ませているだけで本質的にはリチウムイオン二次電池と同じなので、電池としての性能は同等です。
ナトリウムイオン電池 リチウムイオン電池は価格が高価な電池でもありますが、それは多くの場合、正極材料にコバルトなどのレアメタルを使用しているためです。レアメタルは輸入によって賄っていますが、レアメタルの生産国は数カ国に限られており、安定供給体制を確保することが重要な課題となっています。そのために使用量の削減や効率的なリサイクル技術の開発などが進められていますが、レアメタルフリーの二次電池開発も取り組まれています。その一つが、ナトリウムイオン二次電池です。ナトリウムイオン二次電池とは、リチウムの代わりにナトリウムイオンが正極負極間を移動することで充放電が行えるタイプの電池です。2012年4月に東京理科大学の薮内直明講師及び駒場慎一准教授らにより発表されたナトリウム電池用正極材料は、レアメタルフリーの新規合成鉄系層状酸化物で、世界の注目を集めています。

二次電池の特徴や主な用途

古くからある鉛蓄電池やニッケル・カドミウム蓄電池は自動車のエンジン始動用や非常用に使用されます。 PCやスマートフォンなどのポータブル電子機器で高容量が求められる場合には、リチウムイオン電池が広く用いられています。 そのリチウムイオン電池にはスマートフォンなどの電子機器の普及と高性能化に伴い、高容量、長寿命化、安全性などの性能向上が求められています。 また、高性能のリチウムイオン電池の開発はもちろんのこと、リチウムイオン電池に代わる次世代の二次電池の開発も盛んに行われています。それぞれの二次電池の主な特徴や用途は以下の表に示します。

名称 正極 / 負極 電圧 特徴及び主な用途
鉛蓄電池 二酸化鉛 / 鉛 2V 単セルあたりの電圧が高めで材料も安価。短時間×大電流放電または長時間×少量放電のいずれでも安定に使用可能。
用途:自動車用バッテリー、バックアップ電源用電池など。
ニッケル・カドミウム蓄電池 水酸化Ni / 水酸化Cd 1.2V 大電流の充放電が可能だが消費電力は小さい。
用途:電動工具、非常用電源など。
ニッケル・水素電池 水酸化Ni / 水素吸蔵合金 1.2V ニッケル・カドミウム電池と同じ電圧で電気容量がおよそ2倍あり、またカドミウムを使用しないためその置き換えとして広まる。
用途:ポータブル電子機器、ハイブリッドカー用途など。
金属リチウム電池 遷移金属の酸化物 / 金属リチウム 3V カドミウムフリーの二次電池として期待されたが、充放電の繰り返しに伴い負極表面に金属が析出。短絡の原因となり安全上の問題から普及せず。
リチウムイオン二次電池 リチウム遷移金属酸化物 / 黒鉛 3.7V リチウムの合金化と負極を黒鉛にすることにより金属リチウム電池の問題を解決したもの。電圧が高く、軽量コンパクト。
用途:ポータブル電子機器、ハイブリッドカー用途など。
リチウムイオンポリマー二次電池 リチウム遷移金属酸化物 / 黒鉛 3.7V 電解液を高分子ゲルに浸み込ませ、電解液に用いられる可燃性溶剤の液漏れを対策したもの。化学反応はリチウムイオン二次電池に同じ。外装にアルミラミネートパウチが用いられるため、薄型・小型の電池を作ることができる。
用途:ポータブル電子機器など。
ナトリウム硫黄電池 硫黄 / ナトリウム 2V 300℃程度の高温で動作する蓄電池。鉛蓄電池に比べ、1/3程度コンパクト。自己放電がなく、充放電効率が高い。
用途:大規模電力貯蔵。
ナトリウムイオン電池 ナトリウム遷移金属酸化物 / 炭素 リチウムイオン電池と同等レベル リチウムの代わりにナトリウムイオンが移動することにより充放電を行う二次電池。現在研究段階であるが、豊富に存在するナトリウムを材料とする点が期待されている。
用途:スマートグリッド用大型電池、電気自動車用電源