リチウムイオン電池負極の非大気暴露ラマンイメージング

充電前のシリコン系負極のラマンイメージ

:結晶性シリコン 
:アモルファス化シリコン 
:グラファイト 
:ケッチェンブラック

充電後のシリコン系負極の非大気暴露ラマンイメージ
光源波長532 nm
対物レンズ100倍 (NA=0.85)
スペクトル数40,000 (400×100) ※図はその一部
測定時間35分

上の2つの図は、リチウムイオン電池のシリコン系負極の充電前後の様子をラマンイメージングで比較したものです。充電後の電池をグローブボックス内で解体して極板を取り出し、LIBcell(不活性雰囲気ラマン測定用密閉容器)に封入して非大気暴露下でラマンイメージングを行いました。充電により結晶性シリコンにリチウムイオンが吸蔵された結果、結晶性シリコンのほとんどがアモルファス化していることが確認できました。

高い空間分解能で活物質の微分散を可視化

グラファイトよりも多くのリチウムを吸蔵できるシリコンは、高容量リチウムイオン電池の負極材料として有力です。しかし、充放電前後の体積変化が大きいためにシリコンの結晶が崩壊してしまい、サイクル特性に課題があります。体積変化に伴うシリコン結晶の崩壊を防ぐ手段の一つとして微粒子化したシリコンを微分散させることが有効ですが、バインダーにポリアクリル酸ナトリウム(PANa)を用いることで各成分を均質に分散できていることが、ラマンイメージングで確認できました(下図)。特にシリコンは1μm以下に微分散されている様子が鮮明に見えます。一方、PVdFをバインダーに用いた極板では、PANaを用いた場合と比較してグラファイトとケッチェンブラックの混合状態に偏りがみられることがわかります。

光源波長532 nm
対物レンズ100倍 (NA=0.90)
スペクトル数22,500
測定時間27分

ラマンスペクトルからリチウム吸蔵状況を確認

分散状態の異なるこれら2種類の極板を用いて充電前後のラマンスペクトルを比較すると、PVdFで作成した極板は炭素材のG-bandに大きな変化が見られ、リチウムが炭素材に吸蔵されて、効率的にシリコンには入っていない可能性が示唆されました(下図)。このように、分散状態によるリチウムイオン電池の特性の違いをラマンスペクトル変化から確認することができました。

■充電前後におけるラマンスペクトル変化

※本サンプルは、東京理科大学 駒場研究室よりご提供頂きました。

Nanophoton product
→充放電in-situラマン測定用セル LIBcell charge
→不活性雰囲気ラマン測定用密閉容器 LIBcell