代表取締役会長 河田 聡

10年近く前、金属ナノ構造を雪のように複雑で美しい形に結晶成長させてみようと考えました。それができれば、メタマテリアルズと呼ばれる3次元の金属微細構造を大量生産できます。光ファイバーやファイバーカプラーを自己成長させた20年ほど前の私自身の研究がヒントになりました[Shoji and Kawata, Appl Phys Lett. 2000]。銀イオンの入った溶液中で銀のナノ結晶に光を当てると、光の当たったところからフラクタル・ナノ構造が見事に成長しました[Takeyasu, et. al., APL Photonics. 2016; Taguchi, et. al, APEX, 2018]。ナノ微細加工をするためにはフォトリソグラフィーというナノ技術があるのですが、大きなものを作るのは苦手です。そんなハイテクを使わずとも、銀ナノ構造が自分で勝手に大きく成長してくれるなら、ありがたいことです。ナノテクの新しい方向になるかもしれません

銀結晶の成長は写真技術(銀塩写真)の現像過程でも使われます。私が学生・大学院生の頃は、研究室に写真現像用の暗室があり、実験データとして撮った写真を暗室の中で現像するのが日課でした。その当時は街の至る所に写真屋さんがあって、「DPE」という看板が掲げられていました。懐かしき昭和の風物詩です。アメリカでこの看板は見たことがないので、和製英語だったのだろうと思います。「DPE」の「D」はDevelopmentの略です。撮影したときに銀塩フィルムにできる銀微粒子の核(seed)は現像液中で成長し、光のあたった領域が銀によって黒くなります。このメカニズムがdevelopmentです。日本語では「現像」と訳します。小さな核が、成長して大きくなって「像」が「現」れるから「現像」です。素敵な訳です。

Develop と言う言葉が使われる他の例は、developed country(先進国)とundeveloped country(後進国)です。後進国や未開発国は差別用語だという理由で、いまではundevelopedの代わりにdeveloping country(発展途上国)というようになりました。それでも世界の国を二種類に分けるのは差別であって、差別言葉を別の言葉に置き換えるだけというのは偽善に過ぎないのですが、そんな例はいくつもあります。

私の解釈は全く異なります。Developed countryとは、成長し終わってこれ以上の発展しないだろう国のことです。Developing countryはまだまだ発展中、これからも成長する国です。私にとっては、若者もdevelopingです。大人はdevelopedしてしまいこれ以上は成長しません。developingとは素敵な言葉です。語源(ラテン語)はdis+envelop、「包みを開ける」という意味です。

新しい街作りもdevelopmentといいます。都市開発会社はdeveloperです。大企業の研究開発はR&D(Research and Development)です。開発(development)とは、小さなアイデアが成長して発展し、新しい街や製品が「像」として姿を「現」すことです。小さな種から大きな木が成長し、そこに動物たちが生活する森が出現することです。結果が現われるまでには、長い月日と優れたDNAと情熱と、そして幸運が必要です。

弱小新参企業は、まさにdeveloping companyです。Developing companyであるナノフォトンは、まだまだ成長を続ける開発会社です。開発(Development)の次には製品(Printing)にします。しかし、それで留まることなくさらに市場で拡大し貢献して参ります(Enlargement)。写真ではなくCCDを使ってですが、、、。

2018年2月14日
ナノフォトン株式会社
代表取締役会長  河田 聡