ラマン分光分析テクニック

測定テクニック編

第12回 冷却加熱下のその場ラマン測定事例

掲載日 2014年12月15日

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前回の「加熱冷却下でその場測定をする」に引き続き、今回は加熱冷却時のラマン測定例をご紹介します。

 

加熱下のその場測定例

ポイント測定(Si基板、黒鉛)

以下に示すグラフは、シリコン単結晶基板および黒鉛を加熱しながら測定したラマンスペクトルです。

Si加熱時のラマンスペクトル
▲(a) Si加熱時のラマンスペクトル
黒鉛加熱時のラマンスペクトル
▲(b) 黒鉛加熱時のラマンスペクトル
 

シリコンのデータでは、加熱に伴ってシリコンのピーク位置が低波数側へシフトし、かつピーク幅がブロードに変化していることが確認できます。このピークシフトは加熱による格子間隔の増加によるものであり、ピーク幅の増加はその格子間隔が広がりを持っていることに起因しています。

また、温度上昇に伴って高波数領域のベースラインが上昇していることも確認できます。これは熱輻射によるもので、加熱温度によってはラマン分光測定を妨害することがあります。900℃におけるシリコンと黒煙のラマンスペクトルを比べると、シリコンの場合にはピークが比較的低波数側にあるため熱輻射の影響が小さくピークが確認できますが、高波数領域にピークを持つ黒煙の場合では、熱輻射によってピークが埋もれてしまいます。

このように加熱ステージを用いた測定の際に、ラマンピークが熱輻射に埋もれてしまう場合には、より短波長の励起光を用いることが必要です。また、ストークスラマン散乱光ではなく、励起光より短波長側のアンチストークスラマン散乱光を測定することも有効だと考えられます。

 
イメージング測定(Ge薄膜)

加熱下のイメージング測定事例は、下記アプリケーションノートをご覧ください。加熱によって結晶ゲルマニウムが成長していく様子をラインプロファイルで観察した例です。

Application note
→非晶質Ge薄膜のAu誘起結晶成長のその場観察
 
 

冷却下のその場測定例

ポイント測定(BaTiO3

クライオスタットを使ったBaTiO3のラマン測定例を示します。室温から冷却するにつれて結晶構造が変化していき、スペクトルに大きな変化が起きている様子が見て取れます。

 
BaTiO3の冷却下でのラマンスペクトル変化
イメージング測定例(グラフェン)

グラフェンを冷却専用ステージ(クライオスタット)にて液体窒素温度に冷却したイメージング例を示します。ガラス補正50倍対物レンズを使用した結果で、クライオスタット窓越しの観察において、高い分解能を維持したまま層数確認ができています。また、冷却によってGバンドおよび2Dバンドのピーク位置がシフトしていることが確認できました。

 
グラフェンの冷却下でのラマンイメージ
 

当社レーザーラマン顕微鏡RAMANtouch/RAMANforceは、本格的なレーザー走査のラマン顕微鏡です。イメージを得るのにレーザー光を動かすことの利点が冷却加熱観察において最大限発揮されます。なぜなら、ステージ周辺のケーブル・配管、場合によってはステージ本体をしっかり顕微鏡に固定して、外界からの振動の影響を遮断した状態でも、イメージングすることが可能だからです。ステージ走査、すなわち冷却加熱ステージ本体を動かしてイメージをとるケースでは、そうはいきません。そもそも、クライオスタットのような大がかりなシステムでは高精度にステージを動かすことが容易でなく、イメージングすること自体がほぼ不可能といえます。