2017年2月のメッセージ
鉄道博物館

海外から東京や大阪に来た知人たちがまず最初に驚くことは、たくさんの電鉄会社や地下鉄があることです。ロンドンでもパリでもニューヨークでもシドニーでもソウルでも北京でも、世界中の都会は だいたい鉄道会社は一社だけです。地下鉄も一社です。ところが、日本はそうではありません。東京には地下鉄が2社あり、私鉄の数は外国人にとってはまさに 無数です。京急、小田急、東急、京王、京成、東武、西武、それ以外にJR、北総鉄道、東葉高速鉄道、埼玉高速鉄道、東京モノレールなどなど、、、。井の頭線って東急か小田急か京王なのか分からない。各社の路線が複雑に交差して相互乗り入れしていて、外国人には大混乱です。大阪でも阪急、阪神、京阪、近鉄、南海、それ以外にJR、神戸電鉄、山陽電鉄、北神急行、能勢電、京福嵐電、叡電などなど、、。新大阪から千里中央までは、地下鉄御堂筋線で15分。もちろん乗り換えなしです。ところが新大阪で切符を買うためには、「北大阪急行」のボタンを押さなければなりません。江坂以北は地下鉄ではなくて北大阪急行だからです。そんなこと地元民しか分からない。直通なのになんで途中で会社が変わるの?天下茶屋から北千里までも乗り換えなしの直通ですが、途中で地下鉄堺筋線から阪急電車に変わります。難波から泉北ニュータウンも直通ですが、南海電車から別の鉄道会社に変わります。切符の買い方が難しいし、相互乗り入れすると料金は高くなります。iPhoneを使えば切符を買わなくていいはずですが、海外のiPhoneのApple payは日本では使えません。日本のApple Pay(Suica)は、日本だけでしか使えないからです。

大阪から仙台に新幹線で行くためには、東京駅で一度JR東海の出口を出てJR東日本の新幹線改札口からもう一度入らなければなりません。切符は別だし、予約も別です。新幹線会社が複数あるなんて、海外から来た人は知る由もありません。JR東日本の改札口からiPhone7のApplePay(Suica)で入構したら、東海道新幹線の改札口は通れません。JR東海はSuica(ApplePay)に対応しないのです。JR東日本が東海道新幹線を運行すれば、こんな不便ことは起きないはず。利用者は、JR東海など無ければいいのにと思ってしまいます。

熱海や伊東では、JRは「東日本」ですがNTTは「西日本」です。高速道路は通っていませんが、もし造られたなら「中日本」高速道路会社でしょう。おかしいでしょう。

私の住む街では、コミュニティーバスが走っています。市の境を越えずに市内だけを走ります。市民は市内に閉じて生きている訳ではなく、市を越えて生活をして います。私の住む街の人たちは、隣の市にある阪大病院や阪大キャンパス、北千里駅、茨木駅などへと通勤・通学し、通院します。自治体の縦割り行政は、市を 越えて活動する市民にとって迷惑です。銀行も製造業も合併に次ぐ合併で生き残りを掛けていますが、行政や公共事業は全く別の文化の中にあるようです。

大政奉還して明治に廃藩置県が行われましたが、それは急場しのぎのいい加減な再編でした。そのあと多少の修正がなされましたが、それでも実際の住民の生活圏や文化圏に対応していない地域が多くあります。その後の150年、急場しのぎの廃藩置県の縦割りは改善されていません。たとえば、理研のある埼玉県の和光市と東京都の板橋区・練馬区は元々武蔵の国であり、同じ生活文化圏です。東武東上線は二つの地域を通りますが、都営地下鉄は西高島平と光が丘で行き止まり、東京都と埼玉県を分断しています。関西では丹波の国は京都府と大阪府と兵庫県に分断されましたが、同じ丹波の国の生活文化圏です。尼崎や宝塚は兵庫県ですが大阪北部と一体です。元々同じ摂津国なのです。今は阪急電車圏です。伊豆の国と駿河国と遠江の国を静岡県として一つにまとめても、市民生活ではそれぞれ別です。伊豆の国はむしろ相模に近く、遠江はむしろ三河に近い。福井県は越前と若狭を一つにしましたが、若狭は近畿圏です。廃藩置県による地域再編はその後の150年の間、思考停止したままです。都道府県をベースにした道州制ではさらに不便を広げることでしょう。

パレスチナ半島、クリミア半島、南シナ海、かつては東西ドイツ、バルト海3国などなど、世界では切っても切れない文化圏が常に争いと話し合いのメインテーマとして存在してきました。

日本の都会では、まるで鉄道博物館にいるかのようです。たくさんの種類の色と形をした電車を見て楽しむことができます。多くの鉄道会社があることによる高コストと旅行者への不便は、複数の文化圏を持つことの代償なのかもしれません。