ナノフォトン社製レーザーラマン顕微鏡 RAMANtouch シリーズは、共焦点光学系を搭載しており、平面方向はもちろん、深さ方向にも高い空間分解能を持っています。プラスチック材料に含まれているフィラーの、微小な材料の分布を、平面および3D で、ラマンイメージングした事例をご紹介します。
プラスチック中フィラーの高分解能ラマンイメージ
プラスチック材料の多くは、単一材料だけではなく、様々な種類のフィラー(充填材)が混ぜ込まれています。添加するフィラーの種類や形状、サイズ、量などを調整することにより、プラスチックの物性を損なわず増量したり、元のプラスチックにない性質や機能を付加することができます。ここでは、プラスチックに無機物フィラーを多く含ませることにより、土壌で微生物により生分解が進むことを目的としている、2 種類の素材について、ラマンイメージングを行いました。
素材 A は、ラマンイメージから、ポリプロピレンの中に数μm サイズの硫酸バリウムの固まりと、サブミクロンサイズの酸化チタンが、それぞれほぼ均一に分布していることがわかりました。素材 B では、ポリエチレン中に、数μm サイズの炭酸カルシウムと酸化チタンが分布していました。酸化チタンは均一に分布していますが、炭酸カルシウムは分布に偏りがあることがわかります。また、酸化チタンは、両素材とも 1μm 以下の粒子が多く、300nm 以下の粒子が点在していることが分かります。このように、レーザーラマン顕微鏡は、高い空間分解能があるため、ラマンイメージからサブミクロンの粒子の分布も明瞭に捉えることができます。
それぞれの光学顕微鏡像とラマンイメージを比較すると、素材A,B どちらも、酸化チタンは、光学顕微鏡像で白い粒と対応していることがわかります。一方、無機フィラーとポリマーは、光学顕微鏡像では曖昧ですが、ラマンイメージでは明瞭に各成分の形状や分布が識別できます。
なお、ラマンイメージングは、ライン照明を用い、X 方向400 スペクトルを同時取得しています。
▲図1 素材A, Bのラマンイメージと光学顕微鏡像
励起波長 532nm
対物レンズ 100 倍(NA=0.9)
スペクトル数 60,000(400 X 150)
測定時間 13 分 20 秒
プラスチック中フィラーの 3D ラマンイメージング
ナノフォトンのレーザーラマン顕微鏡は共焦点性が高く、光が透過する材料であれば、試料内部の分布も、非破壊で分析ができます。図 2 は、素材 A の 3 次元ラマンイメージです。XY 平面イメージを、焦点面の高さを 200nm 間隔で変えながら、複数枚取得することで、空間方向の分布を得ることができました。(図 3 参照)XY 平面はライン照明を用いた超高速イメージングを行っています。
▼図2 素材Aの3Dラマンイメージ 硫酸バリウム 酸化チタン ポリプロピレン
3D ラマンイメージでは、硫酸バリウムの複雑な形状や、微小な酸化チタンの空間分布をあらゆる角度から観察することが可能です。また図 4 の例のように、3D イメージの特定平面を抜き出して表示することもできます。このように 3D ラマンイメージは、立体構造を様々な角度から観察することが可能です。他の試料では、例えば、2D では確認が難しかった試料内部の不良個所の特定や、層の厚みムラなども、非破壊で評価することができます。
▼図4 3Dウインドウ 特定XY面、XZ面の表示