ポリマーの構成
ポリマーとは、言葉の定義としては重合体のことで、単量体と呼ばれる基本単位が多数つながった繰り返し構造をしています。 単量体一個はモノマー、二個はダイマー、三個はトリマーと呼び、もう少し多くのものがつながるとオリゴマーと呼ばれます。 ポリマーと呼ばれるものの重合度は具体的に規定されていませんが、およそ数百個以上になります。 単量体が多数つながった一つのかたまりを分子と呼び、ポリマーのサイズは一般的には重合度よりも分子量で表現されます。 一般的にイメージされるプラスチック容器、合成樹脂性部品などは分子量で数十万ほどになるものが多く、分子量が数万レベルのものはあまり強度を求められないフィルムやホットメルトなどの用途がみられます。
それぞれのポリマーをおもに特徴づけているのは、基本単位である単量体の構成と分子量です。 たとえば、ポリエチレンの単量体であるエチレンとポリ塩化ビニルの単量体であるクロロエチレンでは、水素原子一個と塩素原子一個が置き換わっているだけの違いです(下図)。 しかし、ポリマーとして連なった際には形に偏りのないポリエチレンは結晶部分をもつ構造になり、一方のポリ塩化ビニルは電気陰性度の高い塩素原子のために電荷に偏りを生じて分子内に電気的な結びつきをもつ強固な構造をとります。 このように、単量体がどのような原子から構成されているのか、またどのように配置しているのかによって、ポリマーの構造に影響します。
また、分子量の違いに注目してみると、エチレン単体は室温で気体ですが、重合して分子量が大きくなるにつれ、
流動パラフィン(液体、分子量数100、重合度20前後)
→パラフィンワックス(固体、分子量400前後、重合度20~30)
→ポリエチレン(固体、分子量数10,000~、重合度数100~)
と、性状が変化していきます。 さらに、ポリエチレンと称されるポリマー同士であっても、分子量の違いにより加工時の物性や製品の機械強度が異なります。
このようなことから、ポリマーの分析の基本として、種類の同定と分子量の測定が重要視されます。
ポリマーの種類
ポリマー(合成樹脂)の分類法は色々ありますが加工上の特徴により、
- 熱可塑性樹脂(プラスチック)
- 熱硬化性樹脂
に大別されます。熱可塑性樹脂(プラスチック)は加熱/冷却で流動状態と固体状態を行き来しますが、熱硬化性樹脂は再加熱による流動化が起こりません。
また、熱可塑性樹脂(プラスチック)は、その耐用温度などによる用途で、
- 汎用プラスチック
- エンジニアリング・プラスチック
- スーパーエンジニアリングプラスチック
にグループ分けされます。
身近で目にすることが多いプラスチックの多くは、汎用プラスチックに分類されるものです。代表的なところではポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)などが挙げられます。汎用プラスチックに分類されるものは安価で使い勝手がよいのですが、一般的な耐熱温度は100℃程度なため用途が限られます。そこで、耐熱性を上げて工業的な利用を可能にするプラスチック類が合成されました。それらはエンジニアリング・プラスチックと呼ばれ、ポリカーボネート(PC)やポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)などがあり、耐熱温度は300℃程度あります。
プラスチックの工業的用途が広がるにつれて、「もっともっと!」と要望が高くなり、耐熱性や耐薬品性を向上させたプラスチック群が生み出されました。スーパー・エンジニアリング・プラスチックと呼ばれるそれらには、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)などがあり、従来、金属が使われていたようなところにも用いられます。しかしこのようなプラスチックは芳香環を多く持つなど生分解性がなく、リサイクル性もよくないという面があります。
一方、自然界に負荷のない形で分解されるようにと開発されたのがポリ乳酸(PLA)などの生分解性プラスチックですが、機械的強度や加工性の面で課題があり、用途は使い捨ての食器など限られたものになりがちでした。 しかし近年、生分解性がなくても原料の一部に植物由来のものが用いられているものも含めてバイオプラスチックと称されるようになり、物性・加工性が向上したPLA重合体、バイオPEやバイオPETは少しずつ市場・用途を広げてきています。
また、高分子鎖の配向性から結晶性/非晶性樹脂にも分けられます。
ポリマーの分類と代表的なポリマー種
結晶性 | 非結晶性 | 主な用途 | ||
熱可塑性樹脂 | 汎用プラスチック | ポリエチレン(PE) ポリプロピレン(PP) ポリエチレンテレフタレート(PET) |
ポリスチレン(PS) ABS樹脂 ポリ塩化ビニル(PVC) ポリメタクリル酸メチル(PMMA) |
雑貨 パイプ 袋 使い捨て容器・包装 |
エンジニアリング・プラスチック | ポリブチレンテレフタレート(PBT) ポリアミド(PA) ポリアセタール(POM) ポリカーボネート(PC) ポリフェニレンエーテル(PPE) |
電気・電子部品 衣料用繊維 |
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スーパー・エンジニアリング・プラスチック | ポリフェニレンサルファイド(PPS) ポリエーテルエーテルケトン(PEEK) ポリテトラフルオロエチレン(PTFE) ポリイミド(PI) |
電気・電子部品 プリント基板 電線被覆 高温や耐薬品性が求められる箇所の部品 |
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生分解性プラスチック | ポリ乳酸(PLA) ポリカプロラクトン(PCL) | 使い捨て食器 | ||
熱硬化性樹脂
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フェノール樹脂 ユリア樹脂 メラミン樹脂 ポリイミド(PI) |
食器 電気機器 電気絶縁体 化粧板 |