Lesson 3.  どんなサンプルが測れるの?

測定可能なサンプルの性状とサイズ

サンプルの性状
無機化合物、有機物、固体、液体、気体、フィルム、粉末、液中、ガラス越しなど、身の回りにあるほとんどのものを、特別な前処理をせずに測定ができます。

サンプルの大きさ
顕微鏡のステージに乗るかどうかと対物レンズの作動距離によりますが、スライドガラスにのるサイズが一つの目安になります。大きいものであれば平面方向はおよそ10cm角、厚さは2~3cm程度は可能です。また、顕微鏡の低倍率で一度に観察できる視野が1~2mm四方なので、米粒一粒ぐらいの大きさの領域内に測定対象を限定できれば、場所探しも比較的スムーズです。高倍率での視野は、100μm四方程度になります。


サンプリング
試料表面を観察したい場合は、ステージに乗る大きさであればそのままでOK。液体であればこぼれないようにガラスのシャーレやサンプル瓶に入れてください。容器越しでも測定可能です。粉末やクリーム状のものであればスライドガラスに乗せたり塗ったりすることで測定準備は完了です。

測定可能なサンプルの例

無機化合物配管のサビ(酸化鉄の価数の区別)
半導体材料半導体結晶(結晶形、応力歪み)
グラフェン
リチウムイオン電池材料電池極板の塗工剤(結晶性評価、分散状態評価)
医薬品材料錠剤(結晶多形、成分分布評価)
ポリマー不透明なポリマーフィルム、バルク
透明樹脂の積層フィルム
結晶性ポリマーの評価(配向、結晶化度)
その他(含水試料など)ゲル中の油/水エマルジョン
練り歯磨き中の無機化合物評価
食品中の水/油/たんぱく質分布評価

※非破壊での試料内部の測定やX-Zイメージング(非破壊断層観察)ができるサンプルは、可視光に対して透明であること(およそ目で見て透明)が条件です。また、観察対象物の厚みとしては1μm程度以上必要です。

測定に工夫が必要なサンプル

バルク中の濃度が数%の成分
ラマン活性の強度にもよりますが、一般的に数%程度以上の濃度が求められます。それより少ない場合は、固体であればミクロトームで薄い切片にしたり、半固体であればカバーガラスの間に挟んで薄くのばすなどの前処理を行います。そうすることにより、バックグラウンドの信号を抑えて検出できる場合があります。

試料サイズが1μm以下の場合
低濃度成分の測り方と重なる部分がありますが、できるだけバックグラウンドの影響を小さくするのがコツです。試料自身のラマン活性が強く、バックグラウンドの影響も少ない場合には1μm以下でも検出できるものがありますが、一般的には難しいケースです。

ゴムやPVC
ゴム材料は実用上多量の添加剤が入っているケースが一般的で、それらがラマン散乱光の検出を難しくすることが多い素材です。たとえばカーボンブラックは試料を黒色にするため、試料のレーザーの熱ダメージを受けやすくしてしまいます。また添加剤の中には蛍光が出るものが多いため、添加剤を抜くなど何らかの前処理が求められることが多いです。

測定できないサンプル

純金属(金属結合の結晶)
原理的には金属結合による結晶もラマン散乱を生じます。しかしながら、光は金属の中に入り込めないため、無機化合物や有機物と比べると非常に弱く、実用上、測定は非常に難しいです。