先端増強ラマン散乱顕微鏡 TERSsense

前人未到のナノイメージングの世界へ。TERSsense

TERSの発明と商品化

ガリレオ・ガリレイは天動説を否定して教皇庁に幽閉され、アイザック・ニュートンは太陽が1億5千万km離れた地球の動きを支配するという万有引力を説きました。月が潮の満引きを制御するなんて信じられなくて当然です。しかし常識や権威を否定したときに初めて科学は生まれます。

光学の教科書で教えられる基礎に「回折」があります。最高性能の対物レンズを使ってみても光は回折し、その波長(500ナノメートル)よりも小さいものは見えません。1992年の10月、私はこの常識を否定する原理を思いつきました。

波長よりも小さな金属針の針先を光に当てると、光の波長よりも小さな光スポットが形成され、それを観察試料の近くで走査するとナノの光学顕微鏡ができるかもしれない。そう気づいた私は研究室にあったまち針の先端を手で研磨し、レーザー光を全反射させたプリズム表面に先鋭化した針を近づけてみました。見事にナノの光スポットが光り、そのときに超高分解能の顕微鏡が完成したのです。早速特許を取得し、翌年の国際会議で発表しました。当時は注目を浴びることはありませんでした。

1999年に、ラマン散乱顕微鏡としての応用を学会発表しました。それから数年して、TERS顕微鏡ブームが始まりました。その後私たちは、非線形分光やナノ圧力印加などのさまざまな新しい原理と、ナノ材料の観察への応用研究を発表しています。

TERSの操作にはとても高い技術が必要です。再現性も高くはありませんでした。それではせっかくのナノ科学、ナノ材料、ナノ研究の研究者や技術者、ユーザーの手にTERS顕微鏡が届きません。私たちは一般のユーザーが使える装置の開発をここ数年進めてまいりました。そして今回、ついに技術移転することにいたしました。最初の発表から実に20年が経ちました。革命的技術とはそんなものなんだろうと思います。コペルニクスからガリレオまでは50年以上かかったのです。

大阪大学特別教授
河田 聡

 

河田研究室のおもな研究成果

"Tip-enhanced nano-Raman analytical imaging of locally induced strain distribution in carbon nanotubes"
Taka-Aki Yano, Taro Ichimura, Shota Kuwahara, Fekhra H’Dhili, Kazumasa Uetsuki, Yoshito Okuno, Prabhat Verma, Satoshi Kawata
NATURE COMMUNICATIONS | vol4 | October 2013


"Pressure-assisted tip-enhanced Raman imaging at a resolution of a few nanometres"
Taka-Aki Yano, Prabhat Verma, Yuika Saito, Taro Ichimura, Satoshi Kawata
NATURE PHOTONICS | vol3 | AUGUST 2009


"Plasmonics for near-field nano-imaging and superlensing"
Satoshi Kawata, Yasushi Inouye, Prabhat Verma
NATURE PHOTONICS | vol3 | JULY 2009


"Subnanometric Near-Field Raman Investigation in the Vicinity of a Metallic Nanostructure"
Taro Ichimura, Shintaro Fujii, Prabhat Verma, Takaaki Yano, Yasushi Inouye, Satoshi Kawata
PHYSICAL REVIEW LETTERS | vol102 | MAY 2009


"Tip-Enhanced Coherent Anti-Stokes Raman Scattering for Vibrational Nanoimaging"
Taro Ichimura, Norihiko Hayazawa, Mamoru Hashimoto, Yasushi Inouye, Satoshi Kawata
PHYSICAL REVIEW LETTERS | vol92 | JUNE 2004