レーザーラマン顕微鏡 RAMANtouch

Software

大容量の高画素ラマンイメージを分析するには、優れた解析ソフトウェアが必要です。ナノフォトンが提供するソフトウェアは、イメージデータの解析に求められる高速なデータ処理能力と多彩な解析機能を備えており、RAMANtouchによるイメージング分析をアシストします。ここではその一部機能をご紹介します。

機能一覧

測定機能

ZTrack

光学顕微鏡像から試料の表面形状を認識し、表面形状に沿ってラマンイメージングを行う測定機能です。これまで凹凸があって測定が難しかった試料でも、ピンボケのない鮮明なラマン画像が得られます。​
光学顕微鏡像やラマン画像を表面形状に合わせて表示でき、凹凸の材料の分布の関係を確認することもできます。​

AreaFlash

ライン照明を高速に縦方向にスキャンすることで、一度の露光で広範囲の平均スペクトルを取得する機能です。広範囲であることに加えて、CCD上の400スペクトルを積算して1つのスペクトルとするため、非常に高感度なデータが得られます。​
AreaFlashを使うことで、サンプル間の平均スペクトルの比較を行ったり、経時変化するスペクトルの変化を簡単に追跡することができます。​

広視野AreaFlash

電動ステージとAreaFlashを組み合わせることで、広範囲のスペクトルマッピング測定を高速に実現できます。
ステージ走査のみでは広範囲を隙間なく測定することが困難でしたが、レーザー走査と組み合わせることで、試料全体を隙間なく測定することができます。AreaFlashでは非常に高感度なスペクトルが得られるため、広範囲であっても短時間で測定が可能です。​

錠剤の広視野AreaFlashの例。​
1点が約400μm角で20×20点を測定。

ボリュームラマン(オプション)

低N.A.(0.04)の対物レンズでライン上のレーザーを高速走査することによって、6mm x 6mmの平均スペクトルを一度に測定する機能です。錠剤に対しては、拡散効果により内部約0.5mmの深さまでの情報が得られるため、体積領域にして約18mm3がラマン測定の対象になります。

内部参照サンプルによる較正

※特許技術

RAMANtouchには装置内部に、較正用の参照サンプルが搭載されています。レーザー走査により参照サンプルを測定することで、ステージ上に較正試料を置かなくても、波数較正を実施することができます。​
測定中でも波数較正を実施することができるため、一定のインターバルごとに参照サンプルのスペクトルを測定することで、測定中の室温の変化などによるピーク位置の僅かな変化も補正することが可能です。​長時間の測定においては特に効果を発揮します。

高速・高分解能3Dラマンイメージング

非破壊で試料内部を測定できるコンフォーカル光学系の強みを生かして、三次元のラマンイメージを取得します。ステージの高さを変えながら、ライン照明による高速XYイメージングを繰り返し、ソフトウェア上で重ね合わせて3次元データを形成します。試料内部の構造物や添加物などの分布を、より直感的に把握することが可能です。RAMANtouchの高いイメージングスピードと深さ分解能が存分に発揮される測定モードです。

3Dラマンイメージングの測定概略図

Application note
→不織布用繊維の内部構造の非破壊観察

試料表面のカーブに追従する新広視野イメージング機能

広視野イメージング測定機能が新しく生まれ変わりました。広視野の光学顕微鏡像を取得する際に試料表面の高さを自動で計測し、オートフォーカスをかけながら広視野ラマンイメージングが可能です。表面がカーブした錠剤表面も、錠剤の中央から端までピントのあったラマンイメージが得られます。さらに、測定アルゴリズムを改善することで、旧モデルのRAMANtouchとの比較でおよそ3倍の高速化を実現しました。

試料表面のカーブに追従する新広視野イメージング

オート・パーティクル・スキャン(オプション)

光顕像から粒子を自動で認識し、オートフォーカスしながら自動でラマン分光分析を行います。ナノフォトンが得意とする高速・高精度のレーザービーム走査を生かして、各粒子の中央1点を測定するモード、全体をスキャンして平均スペクトルを測定するモード、任意の間隔でマッピング測定するモードを搭載。測定中にリアルタイムでスペクトル検索を行い、自動で成分を同定します。粒子をISO16232に規定のサイズクラスに分類し、サイズクラスごとの測定や解析も可能です。

光学顕微鏡画像から粒子を検出

便利な3つの測定モード

インターレース・スキャニング

はじめに粗くスキャニングをして低解像度の全体像を取得し、その後は間を補完するようにスキャニングを進めて、最終的には高画素なラマンイメージを取得する測定モードです。まずは粗くで良いから試料の全体像を観察したい、という方にオススメです。

錠剤表面のインターレース測定

解析機能

定量評価

混合試料のスペクトルから、成分の混合比率を推定する機能です。混合試料のスペクトルは、試料に含まれる成分スペクトルの重ね合わせで表わされます。最小二乗法によって各成分の重ね合わせ係数を計算することで、各成分の混合比率を推定します。
さらに、混合比率が既知の試料を用いて検量線を作成することで、未知試料の混合比率をより高い精度で推定することが可能です。
ラマン分光では、定量評価は難しいという印象があるかもしれませんが、検量線を作成することで、評価の精度を高めることができます。​

ラマン画像自動生成

ラマンイメージデータ中に含まれるピークを自動的に認識し、ラマン画像を生成する機能です。設定画面から表示したい成分数を変えていくだけで、ラマンピーク強度の大きな成分から画像化されていくため、初心者でも簡単にラマン画像を生成できます。​
また、未知試料や材料の劣化などによりピーク位置が事前にわからない場合や、微弱ピークを探す場合にも便利な機能です。​

パワーポイント出力機能

予め用意しておいたパワーポイントのテンプレートファイルにデータを出力する機能です。​
・ラマン画像​
・スペクトル​
・測定条件​
を一度に出力できるため、ワンクリックで必要なデータがスライド上に並びます。その後はパワーポイント上で細かな調整をすることができ、短時間で報告書を作成することできます。​

マクロ処理

登録しておいた解析機能を一度に実行する機能です。解析手順が決まっているデータに対して簡単に一連の処理を実行できます。​

成分分散性の定量評価

分散性評価はラマン画像中の特定成分について分布の不均一性、凝集性、偏りを定量評価するための機能です。この解析機能では、(X, Y)や(r, θ)などの走査軸に沿ってエッジをカウントする走査線法や、正方形やボロノイ多角形などで区間分割して粒子数のばらつきを調べる手法などを搭載し、さまざまな観点から分散性を定量評価できます。

面積比解析による成分含有比率評価

多成分の分布を表示したラマンイメージを作成し、各成分がどの程度の割合で存在しているかを算出します。1画素ごとに、いずれかひとつの成分のみが存在していると仮定して計算します。後述の最小二乗法による線形和解析を用いて評価する手法もあります。

特定成分の粒径解析

ラマンイメージ中に存在する特定の成分について、粒径の統計解析を行います。粒子を楕円で近似し、個数基準、面積基準、体積基準でのヒストグラムを表示します。あわせて、最大値や平均値、標準偏差などの統計値も確認できます。

錠剤に含まれる原薬の粒径解析

※上市品につきサイズに関する情報を省いてご紹介しています。

特異値分解(SVD)によるノイズ除去

ラマンイメージ中に含まれる成分スペクトルを抽出し、寄与率の高い成分から順番に並べて表示します。寄与率の小さな成分はノイズ成分であり、これらを取り除いてラマンイメージを再構築することで、微弱な信号でも明瞭な成分分布を可視化します。

最小二乗法による線形和解析(CLS)

未知のスペクトルを、既知の原材料スペクトルの線形和で表現し、最小二乗法によって既知スペクトルの強度を算出します。測定条件を揃えた原材料スペクトルを用いることで、成分量の定量評価が可能となります。

リチウムイオン電池の正極材料のCLS解析

多変量カーブ分解(MCR)

未知スペクトルが有限個(N個)の成分スペクトルの線形和で表され、かつスペクトル強度や成分濃度が負にならないと仮定し、成分スペクトルを推定する手法です。高速な計算アルゴリズムと収束性の保証されたアルゴリズムを搭載し、どちらか選択して実行できます。

MCRを用いて計算したHeLa細胞のラマンイメージ