会長室からChairmans Office
第1回 会長室から
福岡にいます。応物学会第78回秋季学術講演会に出席中です。4月から悠々自適と思いきや、相も変わらずの生活です。福岡でも学生チャプターで講演したり、日本在住海外出身研究者ネットワークやOSAとのジョイントシンポジウムに参加したり、過去ほどではないけれど忙しくしています。場所は福岡博多湾に面した国際会議場です。ホテルを隔てた隣の国際センター(似た名前でどっちがどっちだか分からない)と一体に会議が開かれていて、とても快適、便利です。ついこの間まで大学キャンパス内を汗まみれになって歩き回り教室を探して建物の階段を上ったり降り、エアコンのない蒸し風呂のような体育館でポスターと展示会を見た年中行事が、遠い昔のことのように感じます。学会の講演会も、ようやく戦後が終わったのです。講演会の場所や仕組みを変えるということにはたくさんの抵抗がありました。日本人はとにかく変化に弱くて不安ばかりが議論されます。そして、伝統と惰性が混同されます。憲法改定論議も同じでしょう。しかし、イナーシャ(慣性モーメント)に身を任せ決断を先送りしていると、生きている実感が失われてしまいます。生きるということすなわち生命活動とは、新陳代謝があるということです。学会も生きているのです。
今週は、幕張でJASIS(分析機器展)も開催されています。今、学会を途中で抜けてJASISに移動中です。ナノフォトン社は、今年もまた新しい製品と技術を発表します。ナノフォトン社の製品は、外から見ると大きな変化が見えないかもしれません。しかし中身は常に新陳代謝を続けています。1年前の製品の中にあったたくさんの細胞は死に、新しい細胞でもっていまの製品が成り立っています。昨年のJASISとは見かけが同じでも、製品の中の細胞はすっかり変わっているのです。
この日々の新陳代謝を繰り返していることが、ナノフォトンの他社との違いです。細胞は日々死にながらも、生命体としては生き続けているのです。製品販売の終了があっても種の絶滅ではありません。DNAは次の製品に伝えられて、新しい世代が生まれます。
会社組織もこの一年で新陳代謝を経験しました。前社長は辞任し当社を去りました。再び私が会長兼社長兼管理本部長(アルバイト)として、こき使われています。変化があってこそ、人も会社も生きているという実感を得ます。私の悠々自適の生活の夢もしばらくはお預けです。15年の間休むことなく自分のホームページに書いてきた「今月のメッセージ」も、ナノフォトンのページに、書き始めることになりました。今度は学生向けではなく、ナノフォトンの社員やお客さんむけに戯言を書きたいと思っています。会長は今日も快調です。
2017年9月6日
ナノフォトン株式会社
代表取締役会長 河田 聡