会長室からChairmans Office

第4回会長室から
『誰が料理したのか分かる料理を食べたい』


今、新製品を開発しています。誰も思いつかない画期的製品です。見ただけで使ってみただけで、たとえロゴがなくてもナノフォトンの製品だと分かる個性ある製品です。ナノフォトンのような小さな会社は、大きな会社にはない個性があります。何でも揃うデパートやスーパーよりも、新参のユニクロやニトリなどの特定の分野に特化した専門店が成功しています。ナノフォトンも「ラマン顕微鏡」だけに特化した専門店です。大学発のナノフォトン社はもともと光学・分光学・ナノテクノロジーの科学者集団です。大学ではホログラフィーや光メモリ、光ナノ加工装置、ナノ光駆動法などおよそナノフォトニクスに関わることなら何でも取り組んできました。顕微鏡・分光器の世界でもラマン分光に限らず、中赤外・近赤外分光、蛍光分光、近接場光学、非線形光学、AFMなどを基礎として様々な装置や原理を開拓してきました。しかしナノフォトン社は、ラマン顕微鏡だけを作ります。世界で最初の、そして今でも世界で唯一のレーザー走査ラマン顕微鏡メーカーです。小さくても世界初、世界唯一です。

このような専業ビジネスが、最近は二極化しています。巨大なチェーン店と小さなお店の二極化です。日本中に展開する回転寿司チェーン店に対して、頑固親父が握る鮨屋が頑張ります。全国ネットの安価な讃岐うどんチェーン店に対して、長く地元の人たちに慕われてきた小さな手打ちうどん屋さんが頑張っています。小さくて古くて有名でないお店は経営は厳しいものの、大型チェーン店よりも新鮮な食材で心のこもったこだわりのにぎり寿司や手打ちうどんを提供します。こだわりが故に量産のお店よりも値段が高くて、そのために過当競争に負けてしまう老舗もあります。しかし、私はこんなこだわりのお店こそがこれからの社会に必要だと思っています。

街中がマクドナルドばかりでは退屈なんです。幸い、最近こだわりのバーガー店やサードウエーブのコーヒー店も増えてきました。安価で品質の揃ったユニクロだけではなく、高価なルイヴィトンの製品もたまには買いたいのです。安くて壊れなくて高性能なトヨタではなく、たとえ燃費が悪くて値段が高くてもこだわりのBMWに乗りたいのです。洗濯機も冷蔵庫も炊飯器も作る会社のスピーカーよりも、スピーカーしか作らないBOSEのスピーカーが欲しいのです。

分析機器の世界では今、欧米の大きな会社が中小の分析機器メーカーを次々と買収します。こだわりを持って製品を開発してきた小さな会社の名前が消えて、設計してきた人たちの思いが製品から見えなくなってしまうのは残念なことです。ナノフォトンの製品は設計者、開発者、製造者、そのほか品質管理やアプリ担当の人たちの顔が見える小さな会社です。私はナノフォトンの製品は単なる機械ではなく、開発者たちが生み出した個性ある生き物だと思っています。デフレ時代の今、人は量販店で同じ商品を買い求めて自らの個性すら失いつつあるような気がします。地元の人たちに愛され続けたお店がどんどん店じまいをして、チェーン店に置き換わるのを見るのは寂しいものです。他人のネットランキングなど相手にせずに、私だけのお気に入りのお店を探しませんか。皆と同じ映画や同じ小説を読むのではなく、自分だけのお気に入りを探しませんか。

ナノフォトンは値段はちょっと高いけれど知名度は足りないけれど、こだわり満載のホンモノの製品を作っています。長く愛するなら、こだわりのナノフォトンのラマン顕微鏡がお勧めです。

2017年11月1日
ナノフォトン株式会社
代表取締役会長 河田 聡