会長室からChairmans Office

第28回会長室から

『記憶と記録』


2023年11月2日、大阪中之島のリーガロイヤルホテルで「ナノフォトン20周年記念パーティー」を開催しました。大勢の方々にお越しいただき、とても楽しい時間を過ごすことができました。感謝の思いでいっぱいです。そのパーティーの内容は、別途メルマガでご紹介することになると思います。ここではその日に参加いただいた皆さんにお配りした「ナノフォトン20周年記念誌」について、少しだけお話ししたいと思います。

どの会社でも社史というものがあって節目の年にはそれを発刊するものですよと、当時メルマガ担当をしていただいていた根本さんに教えられました。ナノフォトンはまだまだ若輩者でとても半生を語れるような会社じゃないと思いながらも、20歳と言えば成人式です。確かにひとつの節目かなと思い、20周年記念パーティーの開催と共に20周年の社史を作成することにしました。

でも、大変でした。

昔のことを、あまり覚えていないのです。創業前から今日に至るまで余りに色んなことがありすぎて、思い出せないのです。20年後に記念誌を出すと決めていたなら、節目節目で写真を撮り会社に関するデータも残していたのですが、誰も20年先のことなど考えていませんでした。皆、毎日を生き抜けることに必死でした。

と言うわけで、私の頭の中には記憶がない、会社の中には記録がないのです。せめて創業時の会社風景の写真を撮っておけばよかった、と反省しています。iPhoneが発売されるよりも何年も前のことですから、日常に写真を撮ることはありませんでした。私が定年退職するときにも皆さんが退官記念誌を出版してくださったのですが、そのときにも講義中の写真も実験中の写真もゼミ中の写真も一枚も見つかりませんでした。私は記録マニアでは全くなく、人に撮られるばかりの立場の人でした。しかも撮られっぱなしで整理も保管もしていませんでした。今回の記念誌の最初に出てくる私自身の写真も、理研で何かの折りに専門の写真家に撮られたものです。10年以上前の写真です。若すぎて恥ずかしい。昨年会長をしていた学会(Optica)でも、これが何度も使われていました。

記念誌にはナノフォトン社の20年におよぶ挑戦と失敗が、時を追って書かれています。しかし、お祝いの記念誌なので本当に厳しかったことは書かれていません。記憶があやふやで記録が不十分であったのが、良かった思います。

それでも、創業時からこれまでナノフォトンに関わってこられた方々にインタビューをし、データと写真を提供していただきました。

人も金も時間も場所もないナノフォトンがどうやってこれまで20年を生き残り、ラマン顕微鏡を5機種発売し、これからの未来「ナノフォトン2.0」の新たな挑戦に本気でいられるのか、パーティーにご出席いただけなかった方々にも、この記念誌をご覧いただければお分かりいただけるかと思います。

ご多忙の中、20周年記念パーティーにご出席いただいた皆さんに厚くお礼を申し上げます。また、これからもお付き合いとご支援をよろしくお願い申し上げます。

2023年11月3日
ナノフォトン株式会社
代表取締役会長兼社長 河田 聡