会長室からChairmans Office

第10回会長室から
『鯨に優しいナノフォトン』


プラスチックによる環境汚染が世界で大きな問題になっています。海には膨大な量のマイクロ・プラスチックが浮遊しており、生態系を破壊しています。スペインで見つかった鯨は30キログラムものプラスチックのゴミを飲み込んでいました。 タイでは衰弱した鯨から80枚のビニール袋が見つかりました。日本ではミネラルウォーターやお茶だけでなく、醤油瓶もガラス瓶からプラスチックボトルになり、ビールですらアルミ缶からプラスチックボトルに変わりつつあります。日本社会のプラスチック依存症は深刻です。分別するよりも、製造しないこと、使わないことが大切です。先日のG7ではプラスチック汚染対策の「プラスチック憲章」が批准されましたが、日本は署名しませんでした。これまでに60か国以上がビニール袋の廃止や課金を実施しています。スターバックスはプラスチックのストローの廃止を決めました。

どうしてプラスチックはそんなに嫌われているのでしょうか。プラスチックが寿命が長くて、何百年もの間自然には分解されないからです。寿命の長い材料は、優れた材料ではない? 

ガリバー旅行記の中で、日本に来る前にガリバーはラグナグの国を訪れました。そこでガリバーは永遠の寿命を持つ不死人間、Struldbrugを知りました。いくら老いても死ぬことのない人間です。 これは、スイフトによる長老支配社会に対する風刺、痛烈な皮肉です。いまの日本では、年長者のみならず歴史ある会社や歴史ある大学、組織に尊敬が集まります。 一方、世界的には若さが求められます。グーグル社はまだ20歳、アップル社は42歳です。 平均年齢が100歳を超える日本のメーカーと比べて、アメリカの会社は若くて体力も気力もあって、行動が早く決断も早い。中国の会社などはさらにもっともっと若い。 

ナノフォトン社は今年、創業15周年を迎えました。15歳の高校1年生です。若くて元気です。そして、若さゆえちょっと危なっかしい。今年は通常の社員採用に加えて、6月7月に4人の新しい仲間を迎えました。 大阪に二人、東京に一人、そして北京に一人です。ただし、4人の年齢層はばらばらです。社員全員が若いと、大阪の千里ニュータウンや東京の多摩ニュータウンのように、ある時に一斉に老けてしまうからです。 

ナノフォトン社は生きています。生きているからこそ、いつも自らの寿命と新陳代謝を考えます。ハイテク製品の材料も新陳代謝を繰り返し、いつか寿命が来たときには地に返るよう考えます。 「ナノフォトン」のロゴがついたお洒落なクリアファイルは、環境汚染ゴミとなるプラスチックではなく、生分解性材料にしました。本当の先端科学技術は、人と地球に優しいのです。 

2018年7月23日
ナノフォトン株式会社
代表取締役会長  河田 聡