Founder's Note

第34回 Founder's Note
『Synergy&Trust』


ナノフォトン株式会社がBRUKERグループに参加したのは2024年2月、創業して21年目のことでした。
当時、ナノフォトンは6年連続黒字で、売上も毎年着実に伸びておりました。良きpartner企業(協力会社)にも恵まれ、協業を始めたばかりでした。しかし一方で、私たちのラマン顕微鏡を全世界に提供するには、年数が掛かりすぎることも認識していました。将来にナノフォトンを売却することがあるならば、会社が絶好調の時だと決めていました。

BRUKER社もまた、最先端・最高性能のラマン顕微鏡製品を開発して市場に提供して行くには長い年数が必要でした。お互いの想いが共鳴したと思います。

2025年11月7日、東京虎の門の Raman-IR Imaging CenterでブルカージャパンのIR営業チームとナノフォトンのラマン顕微鏡営業チームが一堂に会し、初めてお互いの紹介と意見交換を行いました。

私は挨拶の中で、私たちのM&AはEstablishmentEntreprenurshipSynergy(相乗)とHarmony(協調)であると述べました。歴史ある大企業と若く小さなスタートアップという異なる二つの組織が、互いを学び互いの文化を取り入れることで、大きなシナジーが生まれます。

多くの記事では、M&Aの成功率は10~30%程度と報告されています。特に私たちのように、古参大企業と大学発スタートアップ、さらに地域と言語、文化が大きく離れた企業同士のM&Aの成功確率はさらに低いとされています。それでも、BRUKERとナノフォトンの合併はメリットの大きい決断だったと思います。両者とも歴史的に大学教授が創業し,ハイテク・ハイエンド製品作りにこだわってきたという、大きな共通点があります。そして、赤外分光とラマン分光、フーリエ分光法と共焦点顕微鏡という相補的な原理・技術を基本にしているからです。

M&Aを「買った」「買われた」と言う関係で理解する方もおられるかもしれません。しかし。私たちは「買われた」のではなくて「売った」のです。何年にもわたってドイツやスイスから大阪まで何度も足を運び、熱意と誠意で「一緒にやろう」と語り続けていただいたBRUKER社に、私はsympathy(共鳴)を覚え、trust(信頼でもって「売る」ことを決意しました。

SynergyTrustからなるM&Aは、失敗しません。

かつてのナノフォトン東京ショールームには、BRUKERとナノフォトンの両方の両方の大きなロゴが飾られ、両ブランドの製品が並ぶ東京イメージングセンターへと生まれ変わりました。虎ノ門ヒルズから歩いて4分、ぜひお気軽にお立ち寄りください。

A small, passionate team found a new home within a global family

ナノフォトン創業者、CSO and Head of CoE

河田聡