メールマガジンEmail Magazine

メルマガ第2号
藤原取締役インタビュー 「急拡大するマーケット」/オンラインセミナー始めます


政府の緊急事態宣言は解除されましたが、新型コロナウイルス禍の終息は見通しが付かない状態です。ナノフォトンは今回の緊急事態宣言を契機にさまざまなオンライン化や在宅勤務を進めており、従来は会場で行っていたセミナーもオンラインで実施することにしました。初回の5月28日は既に申し込み定員に達しましたが、その後も定期的に実施する予定です。詳細はここからご覧ください。
  さて、今回のコンテンツです

ナノフォトンは大阪大学の研究を基に17年前に創業して以来、最先端の製品を世に出し続けています。今でこそ半導体や高分子などさまざまな分野でラマン顕微鏡の利用が広がっていますが、藤原健吾取締役が入社した2011年当時、ラマン顕微鏡は世の中にあまり知られていなかったそうです。営業と財務、国際を担当する藤原取締役に、この10年の変化についてお聞きしました。(メルマガ編集長・根本毅)

——日本も緊急事態宣言が延長され、出口が見えない状態です。

インタビューを受ける藤原取締役

──転職してナノフォトンに来られたのですね。

以前はIT関係の上場企業で営業や経営企画の部署にいましたが、実際に自分で経営に携わりたくて転職を決意しました。前の会社では高速道路を走っているつもりでしたが、ナノフォトンに移ってからの方が高速道路でしたね。財務、人事、営業、マーケティング、法務、技術メンバーとのコミュニケーション……。あらゆることを短期間で勉強しなくてはなりませんでした。しかも、意思決定が速くないと経営に大きく影響します。ガタガタ道を整備しながら高速で走って、また整備して、という世界でした。自分が何もできないと分かり、もっと勉強しないといけない、というスタートでした。

──今年が10年目です。入社当時、ラマン顕微鏡の知名度はどの程度でしたか?

当時はやはり、「ラマン顕微鏡って何?」と言う方が多かったですね。「聞いたことはあるけど、実際はどういうものなの?」と。ラマン分光法自体は古い技術ですが、顕微鏡として使うのは新しかった。お客様に説明する時、まずはラマンとは何かを伝えることが最も大事でした。赤外顕微鏡に替わってラマン顕微鏡が入り始めた頃です。マーケットの中でラマンを認識してもらう必要がありました。

──ラマン顕微鏡を作る会社はこの10年で増えたのですか?

いえ、ベンチャー企業も出ましたが、ビッグマーケットで戦っているプレーヤーはほぼ変わらず、ナノフォトンを含め5社くらいです。イギリス、フランス、ドイツ、アメリカの各社と競合しています。そういう意味では参入障壁が高いマーケットですね。

──競合他社は大手です。その中でナノフォトンはどうやって生き残ったのですか?

ラマン専業の会社はナノフォトンだけです。他はラマンだけでなく赤外顕微鏡なども製造しています。ナノフォトンが生き残ったのは、ラマンに特化し技術力で先頭を行っているからです。

技術のベースは、河田聡会長が率いた大阪大学大学院工学研究科の研究室です。最先端を行く頭脳がナノフォトンに集まり、ラマンにこだわって一番とんがったところで戦い続けています。会社全体の規模は他社と違いますが、ラマンについてはどの会社より分かっていると自負しています。お客様にも「ラマンと言えばナノフォトン」と認識してもらっていると思います。

──ラマン顕微鏡の認知度も変わりましたか?

認知度は高まりました。今では、ラマン顕微鏡でできることを理解されているお客様が格段に増えました。具体的なサンプルについて、ラマン顕微鏡で測定したらどんな結果が出るか尋ねる方がすごく増えています。

私が入社した当時は、大学や官公庁が中心のマーケットでした。企業は、大手の中央研究所などがようやく使ってみようとしていた段階です。今は裾野が広がり、大手以外もラマンを検討し始めています。企業は競争力を高めるため、サブミクロンレベルでの研究開発が主流となり、赤外顕微鏡より空間分解能が1桁から2桁高いラマンを使った分析が必須になっています。

ラマンは赤外の10分の1の市場規模しかないと言われていましたが、分析機器の市場調査会社のレポートによると、2018年に赤外の4割に迫り、また近赤外分析法を追い越すなど、市場は急拡大しています。2023年に向かって7.4%成長で約630億円に拡大する、としています。ただ、現場の肌感覚ではもっと急激に拡大しており、それどころの成長ではありません。調査会社のレポート以上の速さで市場が成長しています。アジアの成長はさらに速く大きい。そのニーズを刈り取っていくつもりです。

──ナノフォトンも波に乗り、業績を上げています。

最先端にこだわり続けたことが良かったのだと思います。世の中が追いついてきました。お客様である企業が高い空間分解能を求め、ナノフォトンは元々の河田研の顕微と分光の両方の技術でニーズに応えられました。以前はスペクトルだけで判定していましたが、我々はラマンイメージングという概念を初めて導入しました。そうやってマーケットを広げていきました。

──ラマンが使われる分野が広がったのですね。

もともとはナノカーボンの分野がマーケットでしたが、電池、半導体、ポリマー、製薬などあらゆる分野に広がりました。直近では法医学や食品、バイオも挙げられます。基本的に金属以外はラマンで測定できます。レーザーの技術が上がり、検出器の感度も上がり、ラマンでできることが広がっています。この数年、ニーズと技術力の向上がかみ合っていると痛感しています。

──転職にはリスクがあったと思いますが、振り返ってどう考えていますか?

踏み出した一歩は大きなチャレンジでしたが、1回きりの人生、いつ終わりがくるかわからない人生。後悔ない道を選びました。移ってからたくさんのしんどい時期、乗り越えないといけない壁がありましたが、そういう経験をさせていただいて成長できたと思います。ナノフォトンに出会っていなかったら今の自分はいない。そう考えると怖いですね。

ナノフォトンはまさに今、新たな成長フェーズに入っています。経営者の一人として職責を果たし、最高の社員と共にナノフォトンをさらに進化、成長させてまいります。

【編集後記】
新型コロナウイルスの緊急事態宣言が大阪や兵庫で解除されてから初の週末が過ぎ、ナノフォトンの社内からも「日曜に大阪ミナミの新世界で様子を見てきた」「神戸の南京町も人出が戻っていた」などの声が聞こえてきました。早く正常に戻ってほしいものです。(メルマガ編集長・根本毅)