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レポート
社内向けナノフォトンセミナーを開催しました


 ナノフォトンでは、様々な分野の研究者の方をお招きしたセミナーを定期的に開催し、常に最先端の研究や技術に対する知見を深めています。 今回は、岡山大学 学術研究院 環境生命自然科学学域(理) 准教授の『武安伸幸』先生を大阪ショールームにお招きして、「ボトムアップ的手法を用いた貴金属ナノ構造の作製とSERS応用」というタイトルで講演を行っていただきました。(メルマガ編集/原田亮) 

熱心にお話される武安先生(左上)。セミナーには、技術のメンバーだけではなく、河田会長はじめ営業部署のメンバーも参加して知見を深めました。

「ボトムアップ的手法を用いた貴金属ナノ構造の作製とSERS応用」

ラマン散乱光は極めて微弱な光であるため、微量な分子からのラマン散乱光は通常測定することは困難です。しかしナノ構造をもつ金属基板に付着した微量な分子からのラマン散乱光は、通常よりも約104-5倍増強され、観測できるようになります。この現象は表面増強ラマン散乱(Surface-Enhanced Raman Scattering: SERS)と呼ばれ、1970年代後半から多くの研究が行われてきました。現在では、SERSそのものは広く知られるようになりましたが、一方で測定の再現性には未だ課題が残されています。そのため安定してSERS測定を行うための金属ナノ構造の作製方法について、様々な研究が続けられています。  

武安先生は、化学出身のご経験を活かし、還元反応を利用して金属ナノ構造が自己組織的に生成される手法を開発されています。講演では、2種類の金属ナノ構造の作製方法と、それぞれを用いたSERS測定の結果をご紹介いただきました。1つ目は、金属ナノ粒子間の間隔を適切に制御した金属ナノ粒子膜です。金属ナノ粒子溶液に混合する界面活性剤分子の長さを調整することで、使用するレーザー波長に対して最適な間隔を持つ金属ナノ粒子膜を作製できるとのことでした。2つ目は、銀のナノ樹状構造体です。樹状構造とは、シダの葉のように小さな葉が集まって中くらいの葉を形成し、その中くらいの葉が集まってさらに大きな葉を形成する自己相似(フラクタル)性を持つ構造です。銀のナノ樹状構造は、様々な長さの銀ナノロッドを含むため、広帯域のレーザー波長に対応したSERS測定が可能になるとのことでした。 どちらの作製方法も、大量生産に適したボトムアップ的な手法であり、企業として大変興味深い内容でした。

活発な議論が行われ、大変盛況なセミナーとなりました。
今回の学びを活かして、より良い製品開発を進めてまいります。