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熟練への道_5
今回は、ナノフォトンの広視野ラマンスコープRAMANviewの操作に挑戦しました。RAMANviewは、1㎝程度のサイズのサンプルを観察するのに最適な装置。さらに、瓶やパックに入った試料や、表面がカーブした錠剤もそのまま測定できるように設計されています。使いこなす第一歩として、まずはいろいろなものを測定してみました。(メルマガ編集長/サイエンスライター・根本毅)
バイアルのまま測定
RAMANviewの詳しい説明はこちらをご覧ください。このコーナーでも以前、「“宅配便で運べる”を目指し開発」のタイトルで紹介しています。薬の錠剤や岩石の全体像を見られる装置であり、手軽に持ち運べる小型軽量ボディーが特徴でもあります。
レーザー波長は532nmか671nm、対物レンズは0.3~2.0倍から選択します。今回は、671nmのレーザーと1.0倍の対物レンズが装着された大阪ショールームの装置を使わせてもらいました。1.0倍の対物レンズの場合、ラマン画像の測定範囲は1.25×1.25cm、空間分解能は6μmです。
社員のみなさんはとても忙しそうなので、基本的な使い方を教えてもらった後は1人でいろいろなものを測定してみました。
さて、まずはスイッチオン。装置を安定させるため、約1時間待ちます。この間に、ラマン散乱光を検出するCCD検出器の温度は-70℃に下がります。
RAMANviewの特長の一つは、容器の底の試料でも測定できることです。これを生かし、まずはバイアルに砂糖を入れて測定してみます。バイアルを使うと、液体や粒状の試料を簡単に測定できるのがいいですね。
遮光カバーは、下から持ち上げてセットします。
遮光カバーを閉めたら、ステージの上下も測定位置の設定もすべてソフト上で行います。
ピント合わせは、マウスホイールの操作でステージを上下させて行います。次に、ラマンイメージが得たい場合は画面上で範囲を決めるだけ。1点のスペクトルが得たい場合は任意の位置でクリックするだけです。レーザービームが動き、指定した範囲や位置の測定をしてくれます。露光時間やレーザーパワーも決めなくてはなりませんが、最初に社員の方に設定してもらい、その後はちょっとずつ変えて試行錯誤しました。
成分を分析
今回は、成分の分布などを可視化するイメージングには挑戦せず、ポイントの測定にしてみました。測定開始ボタンを押して数秒待つと、スペクトルのデータが表示されます。これをラマンスペクトルデータベースの「KnowItAll」で検索すると、「Sugar」が一番上に表示されました。ちゃんと測定できていたようです。
このほか、消毒スプレーなど身の回りのさまざまな液体をバイアルに入れて測定してみました。もう本当にいろいろな液体を。今後、さらにレーザーや対物レンズを変えて測定してみたいと考えています。消毒スプレーはいろいろな成分が混ざっている製品でしたが、エタノールとほぼ同じスペクトルが得られました。
ペットボトルの飲み口は?
「他に何を測定しよう。固体にしようかな」と考えていたところ、以前から気になっていたことを思い出しました。ペットボトルです。ペットボトルを資源ごみとして処分するとき、「プラスチック製容器包装」のキャップやラベルは外しますよね。ただ、飲み口部分が白いペットボトルってあるじゃないですか。
「この白い部分はPET(ポリエチレンテレフタレート)なのかなぁ。もしPETじゃなかったら、混入させちゃっていいのかなぁ」。そう気になっていたんです。
そこで、飲み口部分が白いペットボトルをRAMANviewで測定してみることにしました。
このようにセットして好きな位置を測定できるのも、RAMANviewだからこそ。白い部分と透明な部分をそれぞれ測定し、スペクトルを比較してみました。
後で教えてもらったのですが、PETかどうかをきちんと調べるには532nmのレーザーを使うのがいいそうです。それでも、白い部分と透明部分のスペクトルはいずれもPETに特徴的なピークが現れました。白と透明という色の違いはあれど、どちらもPETと判断して良さそうです。
実は、ネットに答えがありました。清涼飲料水メーカー・ダイドードリンコの「よくいただくご質問」に、こんな項目があったんです。
Q ペットボトルで飲み口が白いものがありますが、材質は容器本体と同じものですか? また、飲み口が白いものと透明なものの違いは何ですか?
ダイドードリンコホームページより
私の疑問、そのものですね。質問に対する答えは「容器も飲み口も同じPET樹脂」でした。詳しくはダイドードリンコのサイトを見てください。
このサイトによると、飲み口が白いのは耐熱性を持たせるために熱処理し、結晶化させたためだとか。そういえば、ナノフォトンのホームページの「樹脂成形品の結晶化度の分析」で、ペットボトルの飲み口から胴体部分の結晶化度の違いを可視化していますね。
いずれ、この「結晶化度の可視化」にも挑戦したいです。
今回は、RAMANviewの操作に慣れるために、あれこれ測定してみました。やはり、習熟には実践が第一です。