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熟練への道_3 
ラマンイメージングに挑戦


 ラマン顕微鏡の初心者である私が、装置を使いこなすようになるまでの道のりをレポートするシリーズの3回目です。シリーズ名を変えて、「熟練への道」としてみました。ちょっと背伸びをしています。
 前回までに、ラマン顕微鏡でプラスチック片を測定し、得られたスペクトルをデータベースに照合するところまで進みました。ただ、それは、ある1カ所を測定しただけ、つまり顕微鏡ではなく分光器としてラマン顕微鏡を使っただけでした。
 今回はいよいよ、2次元の画像を得ることに挑戦しました。(メルマガ編集長/フリーライター・根本毅)

真剣な面持ちでRAMANtouchを操作する根本

3層構造のプラスチックを測定

 今回も、ナノフォトンのセールス&アプリケーションズ担当、足立真理子さん(シニアエンジニア)が先生です。忙しい中、手短に要点を教えてくれました。つまり、がっつり手取り足取り教わらなくても、測定方法は習得できるということです。ただ、データの美しさを求めだしたら奥深い世界が待っているのではないか、と何回か操作した今、感じています。

 使用した装置は、ナノフォトンの大阪ショールームに設置されたレーザーラマン顕微鏡RAMANtouchです。サンプルは、足立さんが用意してくれた3層構造のプラスチックにしました。このプラスチックを深さ方向に測定し、x-z画像を得ようというチャレンジです。対物レンズは20倍にしました。

ナノフォトンの大阪ショールームに設置されたレーザーラマン顕微鏡RAMANtouch
測定に使用した20倍の対物レンズ

 まず、ピント合わせ。RAMANtouchは、サンプルにライン状のレーザーを当てて、同時に400点の測定をすることができます。これが高速測定を可能にした秘密。ピント合わせの際もこのライン照明モードにし、レーザースポット確認という機能を利用すると見やすくて便利です。

ライン照明モードで「レーザースポット確認」機能を利用し、中央の緑色の線が細くなるようにピントを合わせる

 上の画面は、サンプルの表面にピントを合わせているところです。「レーザースポット確認」にチェックを入れると緑色の線が現れるので、この線が細くなるようにマウスのホイールを使って調整します。その後、サンプルの裏面にもピントを合わせると、表面から「50μm」の場所でピントが合ったので、この深さまで「1.0μm」の間隔で測定するように設定しました。

2分足らずで結果

 測定モードを「XZ Imaging」にして「測定開始」ボタンを押すと、あっという間に結果が出ます。測定時間は2分足らずでした。

測定結果が表示された画面

ラマン画像の自動生成

 次は、サンプルのプラスチックの層構造を分析します。「ラマン画像の自動生成」という機能を頼ります。メニューからこの機能を選び、「計算実行」を押すと、ラマンスペクトルを分析して画像にしてくれました。今回の測定では6種類の特徴的なラマンスペクトルを見つけ出し、色分けしたようです。そのうち最初の三つを表示したのが次の画面です。

 3層が分かる部分を拡大すると……

 ところで、測定したサンプルは透明です。

 それなのに、ラマン顕微鏡で見ると3層構造が一目瞭然。いやあ、面白いですね。

 以前、社員にお願いしてさまざまな包装プラスチックや容器を測定してもらいましたが、自分でやってみて再び感動しています。身の回りの包装プラスチックが特別なものに見えてきます。

データベースで成分分析

 3層それぞれの成分も、データベースですぐに調べられます。まず、赤色で示された真ん中の層のスペクトルデータを「KnowItAll」というソフトで解析します。

一番上にポリエチレンテレフタレートが表示された

 スコアが一番高いのが「ポリエチレンテレフタレート」でした。サンプルのスペクトルにデータベースのスペクトルを照らし合わせて、最も合致したのがポリエチレンテレフタレートだという意味でしょう。ペットボトルで使われるPETですね。

 同じように、一番上の層(緑色の層)と、最下層(青色の層)も調べてみると、一番上の層は「HDPE」(高密度ポリエチレン)、最下層は「ポリプロピレン」のようです。あっという間に分かってしまいました。

 こうなると、さまざまな包装プラスチックを自分で測定してみたくなります。プラスチックはそれぞれ特有の性質や機能を持っていて、ポリプロピレンには防湿性や帯電防止性、PETには剛性や保香性などがあります。これらを層状に組み合わせた結果、例えばかつお節のパックは一定の硬さを持った上に、内部が湿るのを防いでいるのです。

 さて、今回はここまで。次は何を教えてもらおうか、考えを巡らせています。