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ラマン顕微鏡
初心者が使いこなすまで(その2)


 ラマン顕微鏡初心者の私が装置を使いこなせるようになるまでの道のりをレポートします。第1回の前回は、おっかなびっくり触ってピントを合わせ、 「測定開始」ボタン を押したらラマンスペクトルが画面に出てきた、というところまで。本当に簡単で驚きました。今回は、このラマンスペクトルをデータベースと照合してみます。(メルマガ編集長/フリーライター・根本毅)

 「自分でラマン顕微鏡を使えたらいいのに」という発想からスタートしたこの企画。「身の回りのプラスチックや食品などを自分で測定し、成分を突き止めたり、各成分の分布を見たりしてみたい」という発想からスタートしました。

 操作を教えてくれるナノフォトンのセールス&アプリケーションズ担当、足立真理子さん(シニアエンジニア)は、サンプルとしてクリアファイルを用意してくれました。

測定に使った2種類のクリアファイル。ナノフォトンの白いクリアファイルは、生分解性プラスチックを使っています。

 前回はまず、生分解性プラスチックを測定し、この結果を得ました。

 次は、データベースとの照合です。ソフトウエアはWileyの「KnowItAll」を利用しました。Wileyのホームページによると、KnowItAll Ramanスペクトルライブラリーは、2万5000件を超える世界最大級のラマンスペクトルデータベース。モノマー、ポリマー、有機化合物、無機化合物などを含む広範な化合物のスペクトルを収録し、スペクトルだけでなく物性情報や化学構造式も登録しているそうです。

 では早速、データベースと照合し、クリアファイルの成分を調べてみましょう。まず、KnowItAll用のデータを保存します。

 得られたスペクトルの画面から操作し、保存しました。

 次は、KnowItAllを起動し、保存したデータでサーチ。すぐに結果が出ました。

 一番上に出てきたのが、「Ethyl lactate」(乳酸エチル)、2番目が「POLY(DL-LACTIDE)-CO-GLYCOLIDE, 70:30」でした。今回はデータベースを使えるようになるのが目的なので、この結果は深く考えないことにします。ただ、ポリ乳酸や乳酸とグリコール酸の共重合体は生分解性プラスチックなので、なかなかいい結果が出たのではないかと思います。

 透明のクリアファイルも測定し、データベースに照会してみました。KnowItAllでは、最初のスペクトルデータとは左右反転の状態で表示されるので、こちらは元に戻してあります。

 サーチした結果、1番が「Homopolymer, reference」、2番が「Block Copolymer, reference」、3番目が「Polypropylene EOD」でした。どうやら、素材はポリプロピレンのようです。

 以前、社員に協力してもらい、ハムや豆腐、納豆、マヨネーズなどの包装フィルムや容器をラマン顕微鏡で測定したことがあります(2020年10月14日の記事参照)が、この時にもポリプロピレンが検出されています。ポリプロピレンは防湿性や帯電防止性があり、さまざまな包装材料に使われています。

 今回はここまで。ラマン顕微鏡の前に座ってから1時間くらいで、データベースの照会までできるようになりました。下は、足立さんが整えてくれたデータです。黒が透明のクリアファイル、赤が生分解性プラスチックのクリアファイルです。

 簡単に成分分析ができるなんてすごい、と改めて感じました。しかし、まだポイント測定の段階。ラマン顕微鏡の性能のごく一部しか使っていません。ただ、この調子なら、2次元のイメージングデータを測定できるようになる日も近いでしょう。何を測定しようか、楽しみながら考えています。