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導入事例
化学分析センターで活躍するラマン顕微鏡/コベルコ科研


神戸製鋼グループの総合試験研究会社「株式会社コベルコ科研」(神戸市)は2019年10月、ナノフォトンのレーザーラマン顕微鏡「RAMANtouch」を導入しました。同社は、国内外の企業や研究機関などから持ち込まれるさまざまな受託分析や試験、解析を行っています。ナノフォトンのラマン顕微鏡は分析のプロフェッショナルである同社でどんな役に立っているのでしょうか。高砂事業所(兵庫県高砂市)の化学分析センターを訪ねました。(メルマガ編集長/フリーライター・根本毅)

株式会社コベルコ科研 技術本部 高砂事業所 化学分析センター

磯尾室長(奥)と足立さん(手前左)、佐々木さん(手前右)。左に設置されているのが、2019年10月に導入されたナノフォトンのレーザーラマン顕微鏡「RAMANtouch」

化学技術室 の磯尾室長 と、日頃からラマン顕微鏡を使っている分析室の足立さん、佐々木さんが取材に応じてくださいました。足立さんと佐々木さんは主に分光分析を担当し、特に佐々木さんは毎日のようにRAMANtouchで測定しているそうです。

化学を軸にした分析や試験で、お客様の課題解決をサポート

同社は1979年に設立され、分析・解析・測定から試作・製造まで、最新の設備と技術でお客様の課題解決をサポートしてきました。分析や試験、解析などのサービスを提供する「受託試験研究」事業では、対応する分野は幅広く、輸送機、エレクトロニクス、エネルギー、環境など多岐にわたるそうです。

磯尾室長「コベルコ科研は、分析や試験の結果を報告するだけでなく、お客様の課題を解決するための考察や提案も加えて報告することに重点を置いています。我々の化学分析センターは、化学を軸にした分析や試験・実験を行うとともに、化学の専門家がさまざまなデータをもとにお客様の課題解決につながるソリューションを提供しています」

測定速度や感度などから判断し、RAMANtouchを購入

ラマン顕微鏡は以前より保有していましたが、近年、ラマン顕微鏡の性能は飛躍的に向上しました。日々変化する顧客のニーズに応えるため新機種の購入を検討し始めたそうです。

磯尾室長「他社製品と比較しながら、スピード、データの安定性、感度、データ解析ツール、操作性などを総合的に見て、ナノフォトンのRAMANtouchが最も我々の希望に合っているという結論を出しました。実際、サンプルをナノフォトンに持ち込んで測定したデータを社内で見せると、そのデータ品質の良さが話題になりました。また、装置の性能だけでなく、ナノフォトンの担当の方とのやりとりを通じて、導入後もあらゆる相談に乗っていただけるとの印象を持ったことも大きいですね」

さて、同社でRAMANtouchは具体的にどのような役割を果たしているのでしょう。磯尾室長は、半導体、金属腐食、二次電池の3分野を例に挙げて説明してくださいました。

半導体の分析にライン照明が威力を発揮

半導体については、応力や結晶性、欠陥の評価でRAMANtouchのライン照明とイメージング機能が威力を発揮しているそうです。ライン照明は、レーザー光をライン状に引き伸ばして試料に照射し、400点から出るラマン散乱光を同時に検出して高速イメージングを可能するナノフォトン独自の技術です。従来は1点ずつレーザー光を当て、ラマン散乱光を測定していました。

磯尾室長「特にフラットな半導体基板ではライン照明はものすごく使い勝手が良く、短時間で高精細なラマンイメージが取れて助かっています。最近では、パワー半導体デバイスの素材として利用が進んでいるシリコンカーバイド(SiC)やガリウムナイトライド(GaN)などの評価についてのご依頼も多いですが、非破壊かつ短時間に深さ方向や3次元のデータ取得もできることから、現在、RAMANtouchは半導体関係の分析においてとても活躍しています」

金属腐食の評価でも活躍

金属腐食については、親会社が金属関係の事業を行っている関係から、腐食評価を行うことが多いそうです。

磯尾室長「ラマンスペクトルがクリアに検出されることから、成分の同定など解析が非常にしやすくなりました。また、腐食生成物の分布状態をあらわすラマンイメージもとても鮮明で、正直、すごいなと思いました。さらに、検出感度が良いことから短時間での測定が可能であり、試料の変質リスクが低減し、さらに微小部から広域まで測定エリアを自由に選択できます。そういう意味でも、お客様の要望にマッチした分析が行えます」

RAMANtouchについて語る磯尾室長

二次電池の評価で高まる期待

そして、二次電池。

磯尾室長「リチウムイオン電池や、これから実用化が進む全固体電池などで、電極や電解質の状態評価にラマン顕微鏡は非常に有効です。例えば、実際に充放電を繰り返していく中で、電池の特性や劣化が何に起因しているかを知るには、リアルタイムでの状態評価が重要ですが、ラマン顕微鏡はレーザーの焦点さえ届けばそのままの状態で測定できる装置なので、このようなニーズに対する応用も可能です。特に、RAMANtouchは二次電池の評価に必要なさまざまな機能を有しているため、当社内でも非常に期待されています。二次電池も半導体も技術革新が日々進んでいる状況ですので、我々もそういった状況変化に対応しなければならないと考えています」

「ラマン顕微鏡は重要な武器」

同社は、持ち込まれたサンプルの分析にとどまらず、課題解決のサポートもしています。日本のものづくり、技術革新を支えているわけです。

磯尾室長「昔の装置は一つのデータを取るのにいろいろな設定が必要でした。しかし、最近の装置は、ボタンを押せば誰でも一定の品質のデータを取れるようになってきています。それはそれで生産性に大きく貢献すると思いますが、高品質なデータを得るためには、分析の原理や装置の仕組みを正確に理解しておく必要があります。さらに、我々はただ高品質のデータを取るだけでなく、付加価値を付けてお返しする責任があると考えています」

「例えば、お客様が製造した部品に不具合が起きているとします。理由を解明してほしいと依頼を受けると、さまざまな分析手法を駆使してあらゆる視点からデータを取り、総合的に解析することで、考察を作り上げていきます。時には、不具合ではなく、新しい現象の解明につながる場合もあります。このようなお客様の課題解決や研究開発支援のために、ナノフォトンのラマン顕微鏡は重要な武器となっています」

実際に操作している方の感想は?

実際に使っている社員の方に、操作性や性能について感想を聞きました。

佐々木さん「レーザーの切り替えをワンクリックででき 、パワーの設定自由度も高いので、条件調整にとても便利です。また、測定しながら解析ができるので、作業効率も上がりました」

佐々木さん

足立さん「ラマンイメージンがきれいです。また、レーザーを当てたままリアルタイムでパワーの調整ができるところもいいですね。そして、ナノフォトンに問い合わせをしても、それに対する反応が速いのもありがたいです」

足立さん

佐々木さん「対応がすごく丁寧で速いということはとても助かっています」

話をうかがっていて、分析におけるラマン顕微鏡の重要性や可能性を強く感じました。磯尾室長も、次のように話しています。

「あらゆる産業分野のさまざまなニーズに対して、いろいろなアウトプットができるのがラマン顕微鏡のいいところです。また、試料の全体像をつかむような分析にも使えるし、電子デバイスのように微細化、複雑化が進む分野でのミクロな領域の分析にも有用です。さらに、あらゆる情報を画像として可視化できるのがすごく得意な装置なので、非常に分かりやすいデータであると、お客様にも喜ばれます。このように、世の中のニーズに非常にマッチしている装置だと思います」