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メルマガ第5号
金孝珍・取締役アジア担当インタビュー「韓国のラマン市場」


ナノフォトンの定時株主総会が6月19日に開かれ、新たな取締役(アジア担当)に韓国法人「Nanophoton Korea」代表取締役の金孝珍(キム・ヒョジン)氏を選任する議案が承認されました。金取締役は1959年生まれ。2016年のNanophoton Korea設立時からゼネラルマネジャーを務め、今年4月に代表取締役に就任しました。藤原健吾・取締役専務に、金取締役のインタビューをしていただきました。

──自己紹介をお願いします。

ソウル大学薬学部で学びましたが、薬の品質を調べる分光器やクロマトグラフィーなどの分析装置に興味を持ち、大学院は製剤分析の分野に進みました。さらに、この分野の知見を広げるため米オレゴン州立大に進学し、化学で博士号を取得しました。専攻を薬学から化学に変えたのは簡単ではありませんでした。

博士号を取得後に韓国に戻りました。博士課程で新しい分析装置の開発に取り組んでいたこともあり、1999年にポータブルNIR(近赤外)分光分析装置のベンチャー企業を設立しました。現代(ヒュンダイ)や韓国政府などから投資を受け、いくつかのプロジェクトは成功を収めました。しかし、ビジネスを広げるためにはグローバルに展開する必要があり、厳しい側面もありました。

Zoomでのインタビューに答える金取締役

そうした時、グローバル展開のため韓国に営業拠点の設置を検討していた企業から「韓国に現地法人を設立したい」と声がかかりました。悩んだ末、ベンチャー企業を友人に譲る決断をし、そこから、グローバル展開する分析機器会社でのキャリアがスタートしたのです。その後、縁があって、ナノフォトンの韓国法人のゼネラルマネジャーに就任しました。ナノフォトンは私のネットワークと技術的な経験を生かし、ビジネスを発展させていく可能性を秘めていると考えました。

──会社を経営するにあたり、難しかったことは何ですか?

技術主導の会社の創業者の多くは「新しいものを作れば買ってもらえる」と考えます。それが正しい時もあるかもしれませんが、多くは間違っています。また、技術を受け入れてもらうまでに非常に時間がかかります。だから、受け入れてもらうまで生き残らないといけません。

ベンチャー企業で経営している間、投資家からプレッシャーを受け続け、とてもストレスでした。私はビジネススタイルを変え、「お客さまの声」を大切にするよう心がけました。お客さまが欲しいものを、私の技術や経験、ネットワークを使って開発するようにしたのです。当時の経験が今も、役立っています。

──7月6日で、韓国法人の設立から4年です。

4年は長いですが、私たちのビジネスではとても短い時間です。なぜなら、私たちは製品を売るのに通常2~3年かかります。お客さまにコンタクトして、お客さんが予算を確保して、製品を売って……と。

しかし驚くことに、当社は4年で20台超の販売実績を上げ、ハイエンドラマン市場において韓国ナンバー1の会社になりました。私たちのラマン顕微鏡の性能のお陰です。お客さまがサンプルを測り、他社と性能を比較するといつも、「ナノフォトンの製品が欲しい」と言ってくれます。価格よりも性能で選んでくださいます。

──韓国経済はどのような状況ですか?

新型コロナウイルスの感染拡大で、非常に厳しい状況にあります。しかし幸いなことに、私たちの主要顧客はそれぞれの産業のリーディングカンパニーです。これらの企業は最新の製品を開発しなければならず、投資を止めてはいません。品質管理のために新しい分析機器が必要なのです。この状況は、私たちにとってチャンスです。

分野としては、第一に2次電池です。サムスンSDIとLG化学はモバイル2次電池市場のトップ2社で、現在は電気自動車の電池市場に進出しています。最近では、現代自動車がこれらの企業と電気自動車用電池を共同開発すると発表しています。

2番目にサムスン電子やLGエレクトロニクスなどの半導体業界です。メモリーチップはどんどん小さくなっており、ラマンが重要な鍵になっています。

最後はディスプレイ。これら3つは韓国が世界を引っ張っている分野であり、パートナーを求めています。ナノフォトンが日本企業であっても、一緒に働きたいと思ってくれています。

今後、産業分野だけでなく、大学の分析センターなど研究分野にも注力するつもりです。多くの教授や研究者、学生が私たちの装置を使えば、私たちの技術を広げる助けになってくれます。以前は、大学への導入は競合が多く期待していませんでした。しかし、判断が価格重視からパフォーマンス重視に変わっています。

──取締役としての抱負を

これまでのビジネス経験を共有し、貢献したいと考えています。昨年度、マレーシアとタイにデモ機を設置し、東南アジアへの展開もチャンスです。

──日本をどう見ていますか?

大好きです。政治的な問題とビジネスは全く別です。私たちは、個別の信頼関係で取り組んでいます。