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大阪オフィス移転
大阪・箕面にショールーム新設へ


ナノフォトンは来年1月、大阪大学吹田キャンパス(大阪府吹田市)内にあるR&Dセンターを大阪府箕面(みのお)市に移転し、新たに大阪ショールームを同所に開設します。役員を含め、大阪で勤務する社員は皆、この新オフィスに移ります。大阪大学で2003年2月に産声を上げて間もなく18年。ナノフォトンは大阪大学から飛び立ち、新たなステージへと向かうことになりました。今回の移転の狙いを、創業者の河田聡会長(大阪大学名誉教授)に聞きました。(メルマガ編集長/フリーライター・根本毅)

<新オフィス(大阪ショールーム、R&Dセンター)の連絡先>
住所:〒562-0036 大阪府箕面市船場西3丁目1番7号 ICCビル1F
電話:072-736-9181(代)
※オープンは2021年1月です

移転予定地で内装の打ち合わせをする河田聡会長(右から2人目)=2020年11月30日撮影

──ナノフォトンは、当時大阪大学教授だった河田会長らの研究成果を基に、阪大初の教員によるスタートアップとして創業しました。スタート時の活動拠点は、阪大吹田キャンパスの河田研究室。そして、2004年4月に新たな拠点として同キャンパスの先端科学イノベーションセンターにR&Dセンターを設立し、2011年4月からはR&Dセンターをフォトニクスセンターに移して活動を続けてきました。今回、なぜ移転を決めたのか、経緯を教えてください。

河田会長「創業時から、デザインや設計だけをして製造や販売は外部に任せるビジネスモデルを考えていました。Apple社のように、です。製造は外部委託を順次進め、昨年ついに最後の組み立てまで完全に外部委託にすることができました。販売も外部の代理店にお願いすればいいのですが、うちの製品は高価なので代理店に見本を買ってもらうわけにはいきません。そこで、しかるべき場所にショールームを作ってお客さんに製品を見てもらい、代理店を通じて買っていただければいいと考えました。ショールームにはうちの会社のアプリケーションエンジニアがいて、その人たちが装置の実演を行い、お客さんのあらゆる質問に答えます。ショールームを非常に重要視しています」

──ショールームは現在、東京とソウルにあり、今回、大阪にもできるわけですね。阪大内の今の場所ではダメだったのですか?

河田会長「今のR&Dセンターは、阪大の研究ビルディング内にあります。ここに来た方は装置を見ることができるので、実質的にショールーム機能もあったと言えますが、小部屋に一つずつ装置が置いてあってショールームには見えません。セミナーをしようと思ったら、別の場所を借りる必要がありました。お客さんにとっても、キャンパス内に来るのは大変で、何となく敷居が高かったと思います」

──大阪の中心部ではなく、大阪府北部の箕面市にしたのはなぜですか?

河田会長「移転先は、2021年4月にオープン予定の大阪大学箕面新キャンパスの近くで、現在の場所ともそれほど離れていません。私たちは、研究開発のため阪大との共同研究や情報交換をしており、大学の近くにいる必要があります。また、製造を外に移したものの、特注やプロトタイプ機は自社で製造します。やはり、大学のいろいろな装置や教授たちとのコネクションは重要です。

工事前の移転予定地。奥のドアがショールームへの入り口となる=2020年11月30日撮影

吹田キャンパスから遠くなく、交通の便がいいところを探していると、箕面に新キャンパス移転が予定され、新大阪駅に直通でいける鉄道(北大阪急行線・地下鉄御堂筋線)も延伸することが分かりました。その後、鉄道の開業予定が2020年度から2023年度に延期されたのでためらっていましたが、現在の最寄り駅(千里中央駅)からバスで一つ目の停留所近くに移転先を見つけました。これまで通り阪大の学生にインターンやアルバイトに来てもらえて、社員が引っ越さずにすむというメリットもあります」

──ショールームの開設と同時にR&Dセンターも移転し、大阪の社員全員が移りますが、それはなぜですか?

河田会長「初めはショールームだけを開設し、R&Dセンターは阪大内に残しておくつもりでした。しかし、R&Dセンターが入る場所も借りられることになりました。オフィスは分散せずに一つの方がいい。製造部門がなくなった分、それほど広くなくてよくなりました」

──大学の近くにいることが重要なのですね。

河田会長「大学にいると、学会を通して新しい技術やサイエンスの情報を次々と得られますが、大学を離れると最新の技術や情報が得られず、若い学生との交流もできなくなります。論文を読むにしても、今は学術誌の購読料が高額になり、なかなか会社では購読できません。また、大学の先生に技術顧問になってもらって会議を開いているので、大学に近い方が便利です」

移転予定地の外観。ショールームはガラス張りのフロアに開設する=2020年11月30日撮影

──どんなショールームやオフィスになるのでしょう。

河田会長「ショールームはガラス張りになっていて、外からも見えます。ナノフォトンの製品が並び、デモ測定や商談、セミナーが可能です。オフィスの社員の席は、フリーアドレス。会長室や役員室、ミーティングルーム、R&Dセンターがあります。現在より約3割広くなります」

──現在のR&Dセンターは2011年の移転から約10年たちます。思い出がたくさんあるのでは?

河田会長「思い出深い場所です。建物内にはいろいろなベンチャーが入っていたので、『中小企業やベンチャーは知財をどう扱うべきか』というテーマで専門家に講演してもらったり、お茶会を開いて人的ネットワーク作りをしたりと、とても楽しかった。ここにいたメリットの一つは、人的ネットワーク作りでした。このビルはインキュベーションセンター、要するにふ化させるセンターです。ここでネットワークを少しずつ築き上げ、製品開発も行いました。実力を蓄えて今、自立する時が来たということなのでしょう」