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製品デザイン
「一目でナノフォトン製と分かるように」


ナノフォトンは、製品デザインを九州大学の尾方義人准教授(工業デザイン)に依頼しています。ナノフォトンの製品といえば、白を基調としたシンプルなデザインが印象的。河田聡会長の「見ただけでナノフォトンの製品と分かるように」というこだわりが形になっています。今回は、デザインについて尾方准教授と河田会長にお聞きしました。(メルマガ編集長/フリーライター・根本毅)

研究室でインタビューに応じる尾方義人・九州大学准教授(九大の研究室で)

尾方准教授が所属する九州大学大学院芸術工学研究院(福岡市南区)は、前身の九州芸術工科大学が2003年に九州大学と結合してできました。尾方准教授は、この九州芸術工科大の卒業生でもあります。

尾方准教授「卒業後、家具やインテリアのデザインの仕事をしていました。その後、川崎和男先⽣(現・⼤阪⼤学名誉教授、名古屋市⽴⼤学名誉教授)のデザイン事務所で、家電や情報機器のデザインや、デザインに対する姿勢、考え方を勉強させていただきました。川崎先⽣が阪⼤の特任教授に招かれることになり、少し遅れて私も特任助教授として阪⼤に⾏きました」

河田会長「補足すると、私が大阪大学大学院工学研究科の教授だった2001年、工学研究科に『フロンティア研究機構』が設置されました。大学の枠組みは、旧態依然とした学問分野の体系からなかなか動かせないので、それ以外の分野の受け皿とするためです。

ナノサイエンスはその一つです。さらに、デザイン理工学という分野も立ち上げたいと考えました。工学部も、おしゃれで人が憧れるような製品を作る発想に変わっていく必要があり、そういう先生を呼びたい。そこで、名古屋市大の川崎研にいきなり行って、阪大に来てくれないかとお願いしました。そして、阪大に川崎研究室ができたのです」

こうして尾⽅准教授は河⽥会⻑と知り合い、その後九州⼤に移り、ナノフォトンの製品デザインに携わっています。

河田会長は、過去のインタビューでこう話しています。「デザインにはこだわりますね。人は芸術的なセンスにひかれます。車も家電製品も、動けばいい、使えればいいというのではなく、かっこよくないと売れない。我々が作る製品も、かっこよくあるべきだと思います。社内では、シンプルなデザインにしてほしい、見ただけでナノフォトンの製品と分かるようにしてほしいと求めています」

河田聡・ナノフォトン会長

では、尾方准教授はどのような考えでデザインをしているのでしょう。

尾方准教授「技術を過不足なく表現するというのが工業製品のデザインの考え方です。小さかったら小さく表現し、こことここで意味が違うんだったら意味が違うように表現し、新しい技術が生まれたのなら新しいということをちゃんと伝える。装飾的なものはできるだけ付けないようにし、プロポーションや形のバランスを考えます。ナノフォトンの製品の場合は、河田先生が以前からApple社の製品の話をしていたので、それは頭にあったと思います。

例えば、広視野ラマンスコープRAMANviewの場合、最初に図面を見せてもらい、技術者の設計がうまく伝わるような形を考えよう、と取り組みました。大きく外側の形を探して、だいたいの形ができたら寸法を調整しながらきれいに見えるプロポーションを探したり、どこを見せてどこを見せない方がいいのかと考えたり。技術者とやりとりをしながらデザインしました」

デザインする立場からは、ナノフォトンの装置はどう見えるのでしょう。

尾崎准教授「技術者、設計者がこだわっている部分がよく分かります。ここは絶対に変えられない、という部分と、デザイナーが言ったことに合わせて変えられる、という部分がはっきりしている。技術化したいことが明快です。技術者として自信があるのではないでしょうか。だから、デザインする側も安心です」

河田会長「私の理解では、ナノフォトンは小さい会社だから技術者とユーザーとの距離が近いのだと思います。大きい会社になると、作る側と営業の距離感が出ているけれど、我々だったらユーザーの要望に近いところに技術者がいて、使い勝手がいいように作らないといけません」

河田会長「検出器のCCDが外付けにしてあるのもうちの装置の特徴ですが、たぶん、外付けにするのは尾方さんが言われたことです。CCDは取り換えがよくあり、機能性という意味では内部ではなく外にあった方がいいんです」

尾方准教授「思い出してきました。最初、打ち合わせで見せてもらった時、CCDをそのまま見せても面白くなる感じがしました。本体は垂直と水平、白と黒を意識しています。CCDを見せたら、意味的にも形的にも変化が付けられると思った気がします」

最後に、尾方准教授にデザインの自己評価をお聞きすると、このような答えでした。

尾方准教授「ある会社から『ナノフォトンさんみたいなのを作りたい』と相談を受けたことがあり、うれしかったですね」