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挑戦する社員たち
ナノフォトンでセールス&アプリケーションズを担当するシニアエンジニア、足立真理子さんに初めてお会いしたとき、「私はナノフォトンの製品の魅力を知っています。誰よりも装置愛にあふれています」と話していたのがとても印象的でした。前職時代にナノフォトン製品に出会い、顧客の立場で製品を見ていた経験が今の仕事に生かされています。今回は、足立さんに「愛」を語っていただきました。(メルマガ編集長/フリーライター・根本毅)
──セールス&アプリケーションズは、どのような仕事ですか?
ラマン顕微鏡がどのような分野でどのように使えるか、をお伝えする仕事です。お客さまのサンプルを実際に測定し、「ラマン顕微鏡はこのように有効です」と示しています。講演やセミナーを開いて説明することもあります。また、次世代材料やパワー半導体などこれから発展していく分野で、ラマン顕微鏡がどのように使っていただけるかについて調べたりもしています。
──足立さんから以前、ナノフォトン製品に対する愛の強さをお聞きしたことがあります。ナノフォトンのラマン顕微鏡とはどのように出会ったのですか?
大学卒業後に大手半導体メーカーに入社し、関西の事業所で半導体の評価に携わりました。半導体を作る時には、品質管理やプロセスモニタリングのための評価が必要です。ウエハー(半導体の単結晶を薄板状に切断したもの)にナノメートルレベルの回路を作成する、前工程の開発試作部門で、ウエハー上の異物やプロセスで発生する欠陥などをどのような分析技術で、どのタイミングや回数で分析したら効率よく管理できるかを考える検査技術を担当していました。その後、全プロセスや製品後まで、トータルで評価解析する部門に異動になりました。ラマン分光法を初めて知ったのがその時です。2010年ごろでした。
半導体に適度に応力をかけて、性能を上げる技術があります。どれだけ力をかけたらいい製品ができて、どれだけ力をかけたら悪いことが起きるのかというように、プロセス開発のためラマン分光法で数値を測っていました。この時は、ナノフォトンの製品ではなく、1点のスペクトルを得るラマン装置でした。
ただ、関係者に数値やスペクトルで伝えても、ぜんぜん伝わらないんですよ。どうしたらいいかなと思って、誰でも見たら分かるようにイメージングしようと思いました。でも、ちょっとずつステージを動かして1点1点測らなければならず、1カ月くらいかかるんです。新しい装置がほしくなり、ラマンメーカーを回りました。ナノフォトンを知ったのは、その時です。
阪大のベンチャーと聞いて、デモを見に行くまでは期待していませんでした。でも、私が1カ月かけて取ったイメージングのデータを、20分で取ったんです。「ナノフォトン、ごめんなさい」という感じでしたね。会社に戻って関係者にイメージングしたデータを見せると、「こういう風に改善しよう」と動いてくれました。いろいろな人を動かすには、イメージングしたデータが必要だと痛感し、ナノフォトンの装置のすごさを思い知りました。
──その後、ナノフォトンに転職することになるんですね。
はい。会社が拠点再編を進め、私が勤めていた事業所は閉鎖されることになりました。関東地方に転勤か、東海地方の半導体メーカーに転職するかで迷い、一時はそのメーカーに転職する予定でした。
ただ、長年やってきた仕事を学会で発表してから転職しようと考え、最終面接を待ってもらっていたんです。そんな時、職場の同僚と解散会を開いていると、当時の上司から「ナノフォトンがアプリケーションエンジニアを募集しているので、応募したら」と電話がかかってきました。すぐに応募し、2014年に入社させてもらいました。
学会発表のために転職を遅らせていたのと、上司がその時に求人を見つけたということがなければ、今はありません。ご縁だなと思います。
──入社して、いかがでしたか?
驚きの連続でした。ラマン顕微鏡がさまざまな分野に応用できることを示すため、いろいろなものを測りました。夏場にホワイトチョコレートを測ろうとした時は、溶けると嫌なので冷蔵庫に入れて退社したのですが、次の日に冷蔵庫から出して測ると、水分を含んで材料の分布やスペクトルが変わってしまっていました。
不織布の芯鞘繊維を測った時は、それまで1本の繊維の外側と内側で素材が違うものがあるなんて考えたこともなくて、ラマン顕微鏡の3D測定の結果に感動しました。それまで、私にとってのラマンは応力を測る手段でしかなかったので、リチウムイオン電池や製薬、バイオ、ナノカーボンなどさまざまな分野のさまざまな分析ができることを初めて知りました。
それまで大企業にいて、一つの製品を作るのに何万もの人が関わっていたんですが、ナノフォトンはすごく少ない人数でこんなにすごい装置を作っているんだという感動もありました。
風通しも良いんです。前職の経験から、紫外線のレーザーのラマン顕微鏡を作ってほしいと提案したことがあります。勇気を出して開発会議に出席し、資料を示して「これからは紫外線の時代だ」と訴えました。すると、数日後に河田聡会長が「紫外線のラマンを作ろうと思う」と。それから紫外線のラマン顕微鏡の開発が始まりました。開発の様子は隣で見ていて、すごく大変だと伝わってきたのですが、それでも「ユーザー代表」として改良点や要望をどんどん伝えました(笑)。そうして、紫外線のレーザーを搭載したラマン顕微鏡が完成し、売れていきました。ライン照明を導入して高速測定を可能にした紫外・深紫外レーザー走査ラマン顕微鏡RAMANtouch vioLaもできました。初めてデータを取った時には本当に感動しましたね。
──ウエハーステージ搭載ラマン顕微鏡RAMANdriveの開発も要望されたらしいですね。
はい。大きなウエハーの特定の座標に移動して異物を見たいというお客さまがいらして、そのお客さまと一緒に商品化を進めました。
その後、完成したRAMANdriveをある学会で展示したんですが、半導体業界のみなさんが思いのほかラマンをご存じないと感じました。応力を簡単に見られるとご存じない方が多い。ラマンをご存じでも、昔の「測るのが大変で、測定に時間がかかる」というイメージのままでした。
それから、ラマンの宣伝活動を始めました。目に見えない応力分布もラマンなら正確に測れるし、応力分布を正確に測れるということは応力以外のどんな分析にも使えるということを伝えたかったんです。ランチョンセミナーを開き、執筆や講演の依頼が来たら断らずに何でも受けました。とにかくラマンを認知してもらおうとがむしゃらにやってきました。
──アプリケーションの他に、営業も担当されていますね。
最初はどうなるかと思いましたが、意外と楽しくって。予算の中でどうするのが一番いいか、技術的な提案ができるのがアプリケーションと営業を一緒にやる意味だと思います。また、兼ねていて良かったの思うのが、納品の時です。お客さまがすごく楽しみにしているんですよ。「装置が入るのが楽しみで、朝4時に起きた」という方もいらっしゃいました。装置を立ち上げている横にサンプルが待っていたこともありました。
私たちの装置がそうやって楽しみにされて、喜ばれるがのとてもうれしいです。私たちの役割は、お客さまに装置を導入していただくことではなく、装置でデータを取っていただいて、お客さまの製品を良くしていただくというようなことだと思います。ラマンに関することはナノフォトンに任せて、研究なり商品化なり不具合解決なり、そういうことに時間を割いてほしい、ということが私たちの思いです。だから、壊れにくい装置にしますし、使いやすい装置にします。
納品して終わりではなく、納品が始まりと考え、困ったことがあったら電話やメールをいただくようにしています。「こういうこともできないか」というご相談も多くいただくので、要望に沿うご提案をしたり、新規開発が必要な場合は社内の開発担当と相談したりしています。
ナノフォトンの装置には、お客様の要望で生まれた新機能もたくさんあり、とてもやりがいを感じます。これからも開発担当への橋渡しをしていきますので、今の装置ではできないことでもどんどんご要望をお寄せください。