RAMANdrive
30cmのサンプルでも素早く測定


 前回は、ナノフォトンでセールス&アプリケーションズを担当するシニアエンジニア、足立真理子さんにインタビューをしました。この時、ウエハーステージ搭載ラマン顕微鏡RAMANdriveの開発にも触れましたが、あまり掘り下げられなかったのが心残りでした。そこで、今回はこのRAMANdriveを特集します。RAMANdriveは最大30cmのウエハーをステージにセットし、全面のラマンイメージを超高速で得られるのがすごいところ。その速さの秘密はAreaFlashという機能だそうですが……。前回に引き続き、足立さんに教えていただきました。(メルマガ編集長/フリーライター・根本毅)

2016年に発表のRAMANdrive

 前回のインタビューで、足立さんはRAMANdriveの開発について「大きなウエハーの特定の座標に移動して異物を分析したいというお客さまがいらして、そのお客さまと一緒に商品化を進めました」と話していました。ウエハーは、半導体の単結晶を板状に薄く切断したもので、集積回路の基板に使われます。RAMANdriveは最大30cmの大口径ウエハーを設置できる専用ステージを搭載し、全面測定も小さな部分の測定も高速でできます。

 お客さまの声を受けて2014年に開発が始まったRAMANdriveは、2016年8月に発表されました。ただ、この時はまだ「ウエハー全面のラマンイメージング」は想定していません。AreaFlash機能は搭載されていませんでした。

 足立さんは当時を振り返り、「せっかく大きなものを測れるようになったので、ウエハー全体を測ってみると、1日以上かかりました。これはこれで、業界ではすごくセンセーショナルでした」と話しています。高速測定を可能にしたライン照明という技術を使い、当時の常識としては非常に短い時間で、大きなウエハー全面のラマンイメージが得られたのです。

1日以上かかる測定を12分に短縮

 この後、AreaFlash機能が開発され、同じ大きさのウエハーを12分という短時間で測定できるようになりました。下のデータを見てください。4インチ(10.16cm)のSiC(シリコンカーバイド)ウエハー全面の結晶構造の違いをRAMANdriveで観察したものです。左は1日以上かけてライン照明で詳細に測定したラマンイメージ、右はAreaFlashを使って測定したラマンイメージ。AreaFlashだと解像度が低くなりますが、まずはAreaFlashで測定し、必要に応じて部分的に詳細に測定すれば、時間や手間を大幅に短縮できます。

当初は錠剤の平均スペクトルを得るため開発されたAreaFlash機能

 AreaFlashは当初、RAMANdrive用ではなく、別の用途で開発されました。

 「薬の錠剤の平均スペクトルをRAMANtouchで取りたいという要望があり、製薬分野での利用を想定して開発されました。従来は精密にイメージングしていたのですが、視野全体にレーザービームを均等に当てて平均のラマンスペクトルが得られるようにしました」

 AreaFlashは、レーザーラマン顕微鏡RAMANtouchにも搭載されているライン照明を利用します。ライン照明は、レーザービームを線状に引き伸ばして試料に照射し、試料上の400点からのラマン散乱光を同時に検出する技術。そしてAreaFlashは、この線状のライン照明を垂直方向に高速に振り、一度の露光で視野全体にレーザーを当て平均スペクトルを得る機能です。わずか数秒で結果が出るため、とても人気があります。「ラマン照明が使えるナノフォトン製品ならではの機能です。品質管理部門でよく使われ、ある不純物がどれくらいの割合で含まれているか、というようなことがすぐに分かります」と足立さん。分子の結合が切れるなど反応の過程を短時間で測定することもできるので、製薬分野だけでなく、ポリマーや二次電池などあらゆる分野で利用されているそうです。

AreaFlashの仕組み
AreaFlashで、ライン照明を垂直方向に高速にスキャンする様子

 足立さんはこのAreaFlashに着目し、RAMANdriveで使えば大きな試料を素早く測定できるのではないかと考えました。「ステージを動かして次々と平均スペクトルを測定することにしました」。そして、1日以上かかる測定を、12分に短縮できたのです。このAreaFlashによる広範囲の測定は、試料の大きさが15cmくらいまでならRAMANtouchでも可能です。

ウエハー全面の応力測定にも威力を発揮

 AreaFlash測定は、難しい応力の測定にも有効です。下の図は、30cmのシリコンウエハー表面をヤスリで傷つけ、その傷で生じた応力を測定したデータ。「応力はラマンスペクトルのピークのわずかなずれで判断するため、安定した装置でないと測定は困難です。RAMANdriveなら、これまで何カ月かけてもできなかった測定が素早くできます」(足立さん)。

RAMANdriveのステージナビゲーションシステム 

 RAMANdrive開発のきっかけとなった「ステージを動かし、特定の座標に移動して測定する機能」は、ステージナビゲーションシステムと呼ばれています。

 「特定の位置に正確に移動して測りたいというニューズが意外と高く、ウエハーに限らずいろいろな分野で使われています」

 下はステージナビゲーションシステムの利用イメージです。異物・欠陥検査装置で異物や欠陥を見つけたら、RAMANdriveに座標情報ファイルを入力し、すぐにその場所に移動してラマンイメージを得られます。

最新のカタログをお渡しします

 今回紹介した機能やデータは、最新のカタログに掲載されています。ご希望の方は、こちらの問い合わせフォームに「RAMANdriveカタログ希望」と入力し、お申し込みください。PDFをお送りします。

ナノフォトンの大阪ショールームに展示されているRAMANdrive(傷を付けた300mmウエハーを載せた状態)