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執行役員紹介
新たな役職「営業責任者(CMO)」と「技術責任者(CTO)」に聞く!


 今回は、昨年11月にナノフォトンで新しく執行役員・営業責任者(CMO)に就任した「源泰寛」氏、執行役員・技術責任者(CTO)に就任した「渡邊裕幸」氏を取材しました。なかなか聞き慣れないCMOとCTOとは、いったいナノフォトンでどんなことをしているのか取材しました。(メルマガ編集/原田亮)

源泰寛 執行役員・営業責任者(CMO)

略歴:1987年大阪大学経済学部卒業後、島津製作所に入社し官公庁・大学を中心に営業を行う。その後異業種へ転職し、新規事業立ち上げ、M&A、人事システムの構築等の業務を行う。2008年分析機器業界に戻りナノフォトンの競合外資系企業の日本法人でジェネラルマネージャーとしてマーケティング、人事・管理部門を統括する。その後会社を立ち上げ、装置の開発、社会福祉法人等への人事コンサルティング、ナノフォトンを含む分析機器メーカーへのマーケティング・コンサルティング等を行う。2022年4月からマーケティング担当GMとしてナノフォトンに軸足を置き、2023年11月より執行役員、CMOとして、営業・アプリケーション開発・サービスを含むマーケティング全般の責任を負う。

―ナノフォトンと関わるきっかけを教えてください。

ナノフォトンの競合外資系企業の日本法人にいたときに、JASISなどの展示会でナノフォトンのブースを訪ねて意見交換していました。当時は、ラマン分光装置はスペクトルだけ測る装置と世の中では認識されていて、ラマンイメージングという、ケミカルイメージングをとる機能の認知度は極めて低いものでした。まさに私が務めていた外資系企業とナノフォトンがイメージングラマンの代表格でした。レーザーラマン顕微鏡の中のハイエンド市場で、イメージングが占める割合は1割未満とまだまだ小さかったのですが、これからハイエンドのレーザーラマン顕微鏡はイメージングが主流になると確信していましたので、当時のナノフォトンのマーケティングマネージャーとイメージングの市場を拡大しよう!と、協力して普及していこうということになりました。これからはイメージングが主流というトレンドを作るため、発表内容をあわせ、ケミカルイメージングの有用性と重要性を説いていくと同時に、競合していても、あえてお互いの企業名を出しながらイメージングのデータ評価をお客様に提案していきました。

これまでのラマン分光に革命が起こっていることを、協力して普及活動を行ったのが、ナノフォトンと関わることになったきっかけです。

―そこから、ナノフォトンに参画することになったのはどうしてでしょうか?

私は、外資系企業にいたときに、いろいろな分野でコンソーシアムや研究会等を立ち上げていきました。新しいアプリケーションと市場開拓のために共同研究も含めて積極的に展開しました。しかしながら、日本国内で成果が出始めると、海外の本社が、日本国内の共同研究を破棄して本国での研究に移管したため、喧嘩して会社を辞めました(笑)。

2015年に会社を辞めてからは、自分で会社を起業して、ラマンを活用した専用分析装置等を開発していましたが、参画していた国のプロジェクトが内部意見の対立が原因で終了になるなどしたため、コンサルタント業務に重きを置くことになりました。採用、評価、給与等のシステムを構築する業務をやっていた経験から、給料システムや評価システムを構築するコンサルの依頼を受け、人事システムの構築だけでなく、その有効活用を通じた業務の効率化、コミュニケーションのトレーニング等を行い、離職率を減らして、かつ黒字に転換するという仕事を行いました。同時に、ナノフォトンから、業績改善のためにお客さんを紹介して欲しいという話があり、お客さんを紹介したり、情報提供などをしていました。

その後も、ナノフォトンから営業力の強化をして欲しいと声がかかったので、2020年から営業の手伝いを始めました。その後、営業担当者がやめるタイミングだったこともあり、2022年にナノフォトンに集中して軸足を置くようになりました。

―他にはどのようなお仕事をされていたのでしょうか?

島津製作所に入社し官公庁・大学を中心に営業を行っていましたが、実家のお寺をしている両親が倒れたので、宗派の行事をどうしても行わないといけないこともあり、一時的に住職を継ぎました。その後、ある会社の経営企画室にいて、新規事業立ち上げ、M&Aをしていましたが、デューデリジェンスや人事システムの構築など人事部長も兼務していました。

―なぜナノフォトンを選ばれたのでしょうか?

私は機械オタクで機械が大好きで、バブルのときに金融に就職せずにメーカーに就職したのもそれが理由です。なので、ナノフォトンの装置が気に入ったからナノフォトンを選びました。

今回、ナノフォトンに新たに設けられたCMOという役職に就任されましたが、ナノフォトンでは、具体的にどのような仕事をされているのですか?

CMOとして、営業・アプリ・サービスの統括をしていて、主にマーケティングをしています。実際の市場の動向を調査し、どういう開発をしたら良いかのアドバイス、販売方法の構築や販売資料の作成をしています。分析機器業界は技術先行である場合が多く、社内での製品勉強会でも、自社の良いところだけを取り上げ弱点に触れないことがほとんどです。そのため、営業はお客様にとってどのような場面で有用なのかを知らない、競合との違いを知らないまま仕様の説明やアプリケーションの説明をひたすら行うということになってしまいます。お客様は色々なメーカーを比較して自分たちの目的に合った装置を購入したいのに、各メーカーは自分たちが得意なことだけしゃべって、比較ポイントがずれて比較できないので、お客さんは値段だけで決めたり、買ってから思っていた装置と違うということが起きてしまうことになります。なので、競合も含めて徹底的に調査し、お客様の使用用途にとって一番最適な使用方法を示すようにしています。

私のポリシーは、お客様のためにならないときは売らないことです。うちの装置が本当に役に立つ人にしか売りません。お客様の目的に費用対効果の観点で他の装置が良いと思ったら、競合の装置や他の分析装置を薦める場合もあります。短期的には損するかもしれませんが、中長期的にはお客様の信頼が得られるので、今後うちの装置とニーズが合ったときは必ずうちを選んでくれるようになります。

最近では代理店の池田理化が中心になって、ナノフォトン、ブルカー、パーキンエルマー、ウォーターズ他、国内外のメーカーが協力して、赤外分光や質量分析装置等のいろいろな分析装置で同じ試料を分析するとどのような違いがあるかのデータ比較を行ったり、トヨタ自動車が始めたクラウド解析サービスによってそれらのデータを統合することでどのような情報が得られるかなどを発表する機会をJASISで共同企画するなど、企業の枠を超えた取り組みにも参画しています。

お客様目線で、詳細なスペックだけではなく、具体的にお客様がどういう使い方をされるかを考えて、どう役に立つのかをわかりやすく説明する取り組みによって、引き合い数は大幅に増加しています。

─やりがいを感じる瞬間はどんなときでしょうか?

ナノフォトンの装置は良い装置なので、導入していただければ役に立つことは間違いありません。最先端の技術なので、お客さんはこれまでできなかったことができるようになるのです。世界最高性能のレーザーラマン顕微鏡であると同時に、世界で一番高額なレーザーラマン顕微鏡でもあるため、簡単に売れる装置ではありませんが、その価値を理解してもらって、実際に導入していただいたときに喜びを感じますね。

―最後に、ナノフォトン2.0に向けて今後の抱負をお聞かせください。

ラマンの市場が今後ますます大きくなるのを現場で感じており、この分野をやらなくてはいけません。どのメーカーも開発が主導ですが、ナノフォトンでは現場目線で、お客さん目線に立って、開発や営業ができるような会社にしたいと思っています。また、営業は技術の話から逃げがちですが、私は知識がないのは嫌なのでとことん口を出しています。経済学部出身ですが、本当に経済学部?と言われるくらい技術の話に突っ込んでいきます。実際、外資系企業の頃からの同僚や、ラマンを研究されているお客様に対して、変なプライドを持たずに、わからないことはわからないと言って、聞くことや教わることを恐れませんでした。今でも、実際にお客様からお話を伺う機会を多くしています。だからこそ、お客様とリアルな話ができると思っています。営業で大切なことは、リアリティのある話ができるかどうかで、それには知識と経験が必要です。自分の言葉で話せるかが大切であり、自分の言葉だからこそ相手にも伝わるのです。そういう営業を増やしていきたいと思っています。

―少し、プライベートの話もお聞かせください。趣味は何ですか?

3人の子供のうち2人はすでに大学を卒業して社会人として独立し、3人目は高3で受験生です。
これといった趣味もなく休日は妻の運転手としてどこにでもついていって過ごしています。

ー源さんありがとうございました。
大阪大学経済学部卒で文系でありながら、技術に対する造詣も深く、貪欲に学び続ける源氏の勉強量を垣間見ました。また、住職をされていた経験や、人事やマーケティングといった畑違いの分野で活動していたバックグラウンドが、きっと営業にも生きているのだと感じました。
ナノフォトンでは、源氏をCMOとして、世界のマーケットに挑戦してまいります。

渡邊裕幸 執行役員・技術責任者(CTO)

略歴:1959 年生まれ。1984年富士写真フイルム(現 富士フイルム)に入社。長く解析関連の技術者として商品開発を経験した後、解析技術センター長、先端コア技術研究所長、フェロー(専門職役員)を歴任。その間、JSTの評価委員、内閣府、経産省などの技術委員を担当。業界団体の新化学技術推進協会にて戦略委員長として化学業界の技術開発戦略の策定と国家戦略への打ち込み、国プロ立ち上げを推進した。2022年11月に同社を退社後、2023年1月よりナノフォトンに参画。技術担当のGMを経て同年11月より執行役員、CTOとしてナノフォトンの技術、知財、生産の戦略策定と執行の責任をもつ。2005年阪大河田研にて社会人博士として近接場ラマン顕微鏡の研究で学位を取得。

―ナノフォトンには、どのような経緯で入社することになったのでしょうか?

もともと、38年間富士フィルムに務め、最後は役員であるフェローをしていましたが、2年前にそれが終わったところで、完全にフリーになりました。 なので、色々な企業を回って技術系のコンサルをしようと思い、小さな会社を立ち上げて、個人事業主として独立しました。そこで、ナノフォトンから声をかけてもらいました。

実は、河田先生との付き合いは古く、1988年に河田先生がまだ助手時代に、富士フィルムで新しいデータ処理、分析機器のスペクトルのデータ解析をするということになり、大阪大学の河田先生が面白い本を出しておられたので、河田先生のもとに相談に伺いました。そして、河田先生を富士フィルムにお招きして、10年以上勉強会を開催していました。その後、富士フィルムに務めながら社会人としてドクターをとるために、河田先生に相談にあがり、2002年から河田研に入りました。 そういった経緯もあり、2003年にナノフォトンができたときも、その姿を横で見てきました。実際、初代社長の大出さんともお酒を飲んだり交流がありました。

もともと、私は富士フィルムの解析技術センターにいて、最後はセンター長を務めたのですが、分析を行うときにもナノフォトンの装置を入れていましたので、実は関わりは富士フィルムのときから深かったです。

―ナノフォトンはどういう会社でしょうか?

ナノフォトンに感じるのは、尖っている会社だということです。技術が尖っていて、それを商売につなげようというところに共感していて、それに貢献したいと思っています。そもそも、ラマン分光は良い技術なのですが、まだまだ一般の人が実用的に使いこなせているとは言えません。実際、高感度なラマン分光計をある程度の品質を持って市販できているところは少ない中で、ナノフォトンはそれができていて、すごい技術だと思います。 私はラマン分光を30年やってきていますが、この尖った装置は、色々な人が使うのは難しい、特定の人しか使えないと言われています。ナノフォトンはそれをやっていて、これからもやっていくので、ナノフォトンには大きな可能性を感じています。

―今回、ナノフォトンに新たに設けられたCTOという役職ですが、ナノフォトンでは、具体的にどのような仕事をされているのですか?

ナノフォトンの技術全体に対して責任を持っています。具体的には、R&D、知財、製造、品質管理の全体に対する責任を持つ仕事をしています。それぞれの分野をナノフォトンは今後強くしていこうとしています。実は、最初は技術担当のGMとして、R&Dの仕事をお受けしていたのですが、やっているうちにR&D以外の部分が脆弱だということに気づき、そこを今は強化しています。今後、たくさんの製品を売り出していくときに、同じものをどう作っていくのか、そしてそれぞれの品質をどう担保していくかが大切です。かけられるコストも限られていますが、それをラインに載せていくためには品質マネジメントをしっかりしていかないといけないのが今の課題です。それらをやっていると、仕事の範囲が技術担当のGMから広がって、これは実質的にCTOだよね、ということでCTOという役職になりました。

今の会社に全面的に責任を持つCEOに対して、将来の会社に責任を持つのがCTOです。経営トップに対してうちの技術が将来に向けて大丈夫だと担保する役割がCTOだと認識しています。

―渡邊さんは、今、大阪大学でも仕事をされていますが、どのようなことをされているのでしょうか?

阪大の特任教授をしています。具体的には、JST(国立研究開発法人 科学技術振興機構)からお金をもらって、阪大の中でプロジェクトを動かしています。その事業化戦略に相当するところのリーダーをしています。もともと富士フィルムでも事業化推進をやっていましたので、企業とのつながりを期待されて声がかかったのだと思います。

阪大は医学部、工学部がともに強いのですが、互いに関連が弱いのが課題です。例えば、工学部の成果が医学部につながる、ということになっていなくて非常にもったいないです。よって、このプロジェクトは、共創の場を作る、様々な学部に共に創る場を設ける拠点作りであり、それぞれの事業化をどう推進していくかを考えています。 具体的に言うと、医学部の持っているニーズと工学部のシーズをどうマッチングさせるか、これはまさに婚活アプリと同じ構造なので、ベンチャーにお金を入れて、そのシステムを作ってもらおうということもやっています。

―最後に、ナノフォトン2.0に向けて今後の抱負をお聞かせください。

CTOとして、もっと技術を尖らせて、今後みんながびっくりするような次の技術を作りたいと思っています。なので、今後はR&Dに注力していきたいです(経済合理性のあるもの、商売になることが前提ですが笑)。
次の技術を生み出すポテンシャルは、ナノフォトンに十分あります。

―少し、プライベートの話もお聞かせください。趣味は何ですか?

今までは子育てに忙しかったのですが、最近子どもも大きくなって子育てから手が離れてきています。もともと音楽が好きでブラスバンドをやっていたことから、コンサートを聴きに行ったりしています。

ー渡邊さんありがとうございました。
「今の会社に全面的に責任を持つCEOに対して、将来の会社に責任を持つのがCTOです。」という言葉が印象的でした。ナノフォトンの頭脳として、まさにナノフォトンの製品について品質や技術を将来まで担保するという重責を担われている渡邊さんですが、もっと尖った技術をつくりたいとお話される姿は生き生きしておられ、本当にラマン分光の技術が好きなのだという印象を受けました。
ナノフォトンは渡邊CTOを筆頭に、R&Dの分野にさらに磨きをかけて、知財や品質保証などを今まで以上に強化してまいります。